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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百六十六 結人編 「こんな調子だから」

八月九日。日曜日。


幸い今日は、あまりカンカン照りでもなくやや薄曇りでありつつ天気が崩れる心配はないという、絶好の海水浴日和に恵まれた気がする。


「うみ~っ!」


こういう時、一番はしゃぎそうな千早ちはやちゃんを差し置いて一番テンションが高かったのは、鷲崎わしざきさんのような気がする。しかもその恰好がまたすごいんだ。


たぶん、マイクロビキニってわけじゃないはずなんだけど、元々のボリュームが大きすぎてそれに比例して布が小さく見えてしまう、目に刺さるような蛍光ピンクの水着の破壊力に、僕は圧倒されそうだった。


でも、それを見た結人ゆうとくんは一言。


「まるでチャーシューだな。おデブ」


と冷めた視線で辛辣な言葉を投げつけてた。


「デブじゃない!、私はぽっちゃり!!」


なんていう一連のやり取りがなんだかくすぐったい。


一方、いつものように学校指定の水着を着てさらにその上からライフジャケットを身に着けた沙奈子は僕にぴったりと寄り添ってた。


そうかと思うと、小学生にしては割とプロポーションが良さそうに見える千早ちゃんは、黄色いビキニで、中学生くらいにも見えなくはない。しかも何がおかしいのか、


「はははははは!」


と高笑いしながら仁王立ちになってる。


で、その後ろでは上半身にラッシュガードを羽織った大希ひろきくんが、苦笑いを浮かべ、さらに星谷ひかりたにさんが大希くんに熱い視線を送ってるという。


朝から出てきたおかげで人もまだ少なめだし、早々に星谷さんと手分けして立てた二組のビーチパラソルの下でゆっくりさせてもらう。


「ひゃーっ!」


「きゃーっ!!」


鷲崎さんと千早ちゃんは年齢差を感じさせないくらいほとんど同じノリで、それを浮袋に収まった大希くんが波に揺られながら保護者のように見守ってた。


でもその時、


「…ガキが…」


と忌々しそうに呟く声が。


結人ゆうとくんだった。結人くんが、鷲崎さんのことを見ながら言ったんだ。


まあ、確かに子供みたいなノリだとは思うけど。


ただ、僕はそれでも敢えて何も言わなかった。本気で不満だったらそもそも海にまで来ないと思うから、彼特有のポーズなんだと思う。


別に目くじらを立てる必要も感じなかった。


かと思うと沙奈子は、僕の隣に座って拾った貝殻を見詰めて何か空想に耽ってるような様子だった。『ノリが悪い』『空気を読んでない』という意味では沙奈子も同じなんじゃないかな。しかも星谷さんだって、ビーチパラソルの下に座って大希くんを見詰めてるだけだし。


こんな調子だから。



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