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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百六十四 結人編 「そう思う人同士で」

八月三日。金曜日。


自分に理解できないからって、自分の思い通りにならないからって、他人のことを頭ごなしに否定する人を、僕は信用することはできない。


もちろん僕だって他人に対して批判的な態度をとることだってあるし、実際、批判するようなことだって言ってきたのは分かってる。でも、だからってその人の存在そのものまで否定する気はないんだ。僕とは相容れないっていうだけで。


その人がどういう考え方をして、どういう生き方をしてるとしても、それは僕がどうこうできることじゃないし、していいことじゃないと思う。僕はその人の『保護者』じゃないんだから。責任も負ってなければ何の義務もないし。


僕が言いたいのは、あくまで、『僕はこう心掛けてる』っていうだけだから。


そうだ。わざわざ他人の前に来て生き方や価値観にあれこれ口出しするような人がどんな人生を送ってるか、僕たちは知ってる。自分から進んで他人と揉め事を起こしたりして自分でトラブルを作ってるんだ。


そうやって自分でトラブルを作って苦労の多い人生を送りたい人はそうすればいいと思う。


『自分の感情や気持ちに素直になるのが正しい!』って言って、些細なことで他人を口汚く罵って相手にも『自分の感情や気持ちに素直になるのが正しい!』って思わせてお互いに罵り合うことを一生続けたいのなら好きにすればいいと思う。僕は関わり合いになりたくないけれど。


館雀かんざくさんのような生き方は僕にはできない。


彼女は今、どうしているんだろう?。星谷ひかりたにさんによると、今でもたまに誰かと激しく言い争うような姿が見かけられるらしい。そんなことをしていて疲れないんだろうか。楽しいんだろうか。『自分の感情や気持ちに素直になるのが正しい!』って思えるんだろうか。


不思議で仕方ない。


僕は、そもそも他人とそうやって諍いを起こすことが好きじゃない。『他人と揉めている』ということ自体が僕にとっては本当に大変なストレスなんだ。他人に対する不平不満を口にしないでおくことよりももっとずっとね。


『自分の感情や気持ちに素直になるのが正しい!』と思って他人を罵る人には理解できないかもしれないけどね。


世の中にはそういう人もいるんだよ。些細なことで罵り合うのが正しいと思ってる人ばかりじゃないんだ。そして僕は、他人と罵り合うことをしないからこそ、同じように考える人同士で集まって支え合うことができるようになった。


ここには、他人と罵り合うのを当たり前だと思ってる人の居場所はない。


そう思う人はそう思う人同士で集まってくれればいい。僕はそれには参加しない。



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