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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百六十三 結人編 「似た者同士だから」

八月二日。木曜日。




『先輩を貸してください』


そんな鷲崎わしざきさんの申し出にも、絵里奈は全く動じなかった。それどころか、


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


って平然と応えてた。


「はは…、正妻の余裕を感じますね~」


相変わらずの様子に、鷲崎さんも苦笑いだった。そんな彼女に絵里奈が言う。


「それもあるかも知れませんけど、私には元々、いたるさんが誰と仲良くしても口出しする資格がないっていうのもありますから」


その言葉に、今度は玲那が苦笑いを浮かべる。


そうだ。絵里奈と玲那は『友達以上の関係』で、それは今も続いてる。僕はそのこと自体、むしろ必要なことだと思って一切口出ししていない。たぶん、それについて言ってるんだと思う。


「ああ……」


鷲崎さんにもその辺りの事情は話してあるから、すぐに察してくれたみたいだ。


よくそんなこと他人に話せるなと思うかもしれなくても、相手は鷲崎さんだから話せるっていうのもあるんだ。結人ゆうとくんに何が起こったのか詳しく話してもらってるし、そういう意味でもお互い様だからね。


以前、玲那についての諸々を話した時、鷲崎さんは泣いていた。


「ひどすぎます……」


って。だから絵里奈と玲那の関係が、玲那の心を守るためにはどうしても必要なことだったんだって鷲崎さんも理解してくれてるんだ。それを理解できる人だからこうして親しくもできる。そうじゃなかったらお互いに距離を置いてると思う。むしろその方がお互いのためだし。


受け止め切れない相手とは程々の距離を保つのが大事だって、僕は改めて知った。と言うか、そのこと自体は昔から知ってたかな。逆に、距離を詰めても大丈夫な相手がいるっていうことを知ったと言うべきかもしれない。


世間はいろんなことを言うだろうけど、それは所詮、言ってる人が単にそうだっていうだけでしかない。その人の事情は必ずしも全員に当てはまるわけじゃない。


だからこそ絵里奈は、僕と鷲崎さんのことを信じてくれてるんだ。


もっとも、沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんや星谷ひかりたにさんまで一緒だからっていうのもあるとは思うけど。


それでも、絵里奈がそういう女性だというのを察してたから結婚したというのもある。


僕たちはみんな『普通』じゃない。そして、似た者同士だからこうして呼び合った。それをすごく実感する。




そんなこんなで今年も海に行くことが本決まりになった。あとは天気だけど、崩れることよりも『暑すぎないか』ってことの方が心配かな。移動は基本的に電車になる筈だから。ハイヤーを使うことも検討されたけど、渋滞とか事故とかのリスクを考えたら電車の方がマシということで。



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