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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百六十二 結人編 「先輩を貸してください」

八月一日。水曜日。


いよいよ八月に入ったその日、ここまでの様子を見て、思い切って今日も夕食に誘ってみた。鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんを。


すると、


「まあいいけどよ…」


って結人くんが言ってくれたって。もちろん決して喜んでるわけじゃないけど、ムキになって拒否する必要はないと思ってくれてるらしいのは伝わってきた。


それで、夕食の席で鷲崎さんが、


「ねえ、先輩。今度の日曜日にでも、沙奈子ちゃんも連れて一緒に海に行きませんか?」


って急に言い出した。


「沙奈子ちゃんのご飯をいただいてるお礼も兼ねてと思ってるんですが、ダメですか?」


ちょっと上目遣いで縋るような感じで言われて、僕は少し戸惑ってしまった。


でもその時、ビデオ通話の画面の向こうで、絵里奈が、


「それ、いいですね!。いたるさん、この際ですからご厚意に甘えましょう!」


だって。


というのも、今年は去年と違って、海に行くという積極的な理由がなかった。


去年は星谷ひかりたにさん、イチコさん、波多野さん、田上たのうえさんたち高校生組がいてくれたから小学生組も海に行けたけど、さすがに今年は受験を控えてるからってことで、あまり行けるような雰囲気じゃなかったんだ。


でも、星谷さんが言うには、


「私もイチコもA判定をもらってますので実はそれほど切羽詰まっていませんし、カナは進学せず就職を目指すそうです。ただ、フミが現在、志望校についてはボーダーライン上なので、さすがに遊んでいられないとのことで、フミが行けないのであれば私たちだけでというわけにもいきません。


なので申し訳ありませんが、今年は海は行けない可能性が高いと思われます」


とのことだった。


だけど鷲崎さんの誘いを受けて改めて検討した結果、沙奈子、千早ちはやちゃん、大希ひろきくん小学生組まで海に行けないのは可哀想ってことになって、僕と鷲崎さんと星谷さんの引率で、沙奈子、千早ちゃん、大希くん、結人くんを連れて海に行くことに決まったんだ。


絵里奈と玲那は、玲那の執行猶予が明けるまでは派手に遊ぶのは自粛するということで残念ながら行けないけど、年長者が三人いれば子供たちにも目が行き届くだろうからね。


玲那が言う。


「私のせいで沙奈子ちゃんが海に行けないのはホント辛かった。でも、織姫が誘ってくれて本当に良かった。ありがとう、織姫」


目を潤ませて頭を下げる玲那に、鷲崎さんは、


「いえいえ、とんでもない!。結人のことでこんなにお世話になってるんだから、これくらい当然ですよ。


それに、絵里奈さんを前にしてこれを言うのはあれですけど、私が先輩と海に行きたかったんです。


一日、先輩を貸してください」


と、ビデオ通話の画面からほとんど見えなくなるくらいに頭を下げたのだった。



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