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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百五十八 結人編 「何年か掛かるくらいで」

七月二十八日。土曜日。今日は朝から薄曇りだった。何やら台風が近付いてるとか。


地震に大雨に酷暑に今度は台風か。今年は随分と出し物が多い気がする。


それでも、夜までは大丈夫そうだからいつものように絵里奈と玲那に会いに行って帰ってくると、沙奈子が、


「今日はカレーにする」


と言い出した。この前の日曜日、結人ゆうとくんがすごく美味しそうにカレーを食べてて、鷲崎わしざきさんが、


「また食べたいです♡」


って言ってたからだと思った。明日、千早ちはやちゃんたちと一緒に作るのは別のメニューになるからね。


カレーができてから鷲崎さんに電話すると、


「はい、行きます行きます!」


だって。


もちろん結人くんも一緒に来て、絵里奈と玲那もビデオ画面の向こうでカレーを用意して、六人で夕食にする。


もう、週末には当たり前になって光景。


結人くんは相変わらずムスッとしてるけど、だからといって反抗的な態度をとったりするわけじゃない。かつての沙奈子と同じで、どういう態度をとればいいのか分からないんだっていうのが分かる。


だから僕たちからは何も言わない。鷲崎さんは、


「もう、もうちょっと愛想よくしたらいいのに」


って言うけど、別に僕は気にしない。


だって、僕も、沙奈子も、絵里奈も、玲那も、そういう時期があったから。僕たちと同じだから。他人が信じられなくてそういう態度になってた時期に、頭ごなしに「ちゃんとしろ!」みたいなことを言われてたらもっと反発してたのが分かってるから。


だから待つんだ。僕たちが彼にとって信用に値する人間だっていうのが伝わるまで。


もしそれが伝わらなくていつまで経っても信用してもらえなかったら?。


その時は僕たちのやり方がマズかっただけだと思う。自分がやり方が適切じゃなかったのに、信用してもらえないことを相手の所為にするのは違うと思う。少なくとも僕たちはそんな人は信用できなかった。自分が信用できない人に自分がなってしまってるのに、それを結人くんの所為にはできない。


まだたったの四ヶ月。沙奈子の時にはちょっとずつ打ち解けられてたけど、あれはむしろ早すぎるくらいに早すぎたんじゃないかなって自分でも思う。本当に運が良かったんだ。むしろ結人くんくらいで当たり前なんじゃないかな。他人を信用できるようになるのって、そんな簡単じゃない。ましてや結人くんの場合は、実の母親に本当に殺されそうになるっていうとんでもない経験をしてるんだから、すぐに他人を信用するのはおかしいくらいって気もする。


だから待つ。何年か掛かるくらいでちょうどいいと思うんだ。



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