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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百五十七 結人編 「すごくよく見てる」

七月二十七日。金曜日。昨日の夜、久しぶりに雨が降った。でも夕立みたいな降り方で、時間もそんなに長くなかった。


だけどそのおかげなのかなんなのか、熱さはほんの少しだけマシになった気がする。実際、気温は三十五度くらいだって。決して涼しくはないけど、これまで暑さに体が慣らされたのか、涼しいような気もしてしまうのが不思議だ。


自分のやってしまった間違いや失敗は誤魔化して、でも他人のそれは許さない。


そういうズルい大人を棒は信頼なんてしなかったし尊敬もしてこなかった。けれどそれは、間違いや失敗をしたからじゃない。自分のそういうのは棚に上げて他人を責めるからなんだ。自分が軽蔑してきた大人に僕はならないでおこうと思う。


間違いや失敗をしない人になるのは、そうなれるように努力はするけど現実には無理だから、少なくとも自分のそういうのを棚に上げて沙奈子を責めるようなことはしないでおきたいんだ。


いつものように山仁やまひとさんのところに迎えに行くと、


「おかえりなさい!」


と、三人で出迎えてくれる。千早ちはやちゃんと大希ひろきくんまで僕を家族のように迎えてくれる。


と言うか、もう、家族みたいなものなのかな。少なくとも親戚なんかよりはずっと身近で頼りになる存在だ。そして、僕の方も力になりたいと思える存在でもある。


本当に、まさか他人とそんな関係になれるなんて思ってもみなかった。だけど、それはあくまで『山仁さんだから』なんだよね。今でも誰とでもそうなれる訳じゃない。


鷲崎わしざきさんとなら同じようになれると思うし、もうなってると思えても、それもやっぱり『鷲崎さんだから』なんだ。


僕はいまだに、本質的には人間嫌いで他人と関わり合いになるのは嫌で、面倒なことになるくらいなら一人で気楽に生きていたいタイプの人間なんだ。そんな僕が子供たちに偉そうにするなんてありえない。


それに、沙奈子だけじゃなくて千早ちゃんも大希くんも、すごくいい子だ。ちゃんと物事を分かってるし、自分で考えようとしてる。


もちろん子供だから未熟なところもあるけれど、それは僕自身も子供の頃はそうだったし、それどころか今でも未熟で頼りないと自分でも思う。だからこそ沙奈子たちのことも『お互いに一人の人間として』接していきたいと思うんだ。


『子供は動物で、人間じゃない』


そんなことを考えてる人もいるらしいけど、そういう人は目の前の現実を見てないだけだと思う。自分の『空想』を子供に当てはめようとしてるだけじゃないかな。


子供は、大人のことをすごくよく見てるよ。特に、大人のダメなところ、ズルいところ、情けないところをよく見てて、気付いてる。


本当は偉くなんかないのを、偉そうにしてるだけなのを、子供に見抜かれちゃってるんだ。



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