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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百五十三 結人編 「人の上に君臨して」

七月二十三日。月曜日。


沙奈子の夏休み三日目。でも僕は当然、仕事がある。だから沙奈子には山仁やまひとさんのところで待っててもらう。


朝、僕が出勤する時に一緒に家を出ると、


「いってらっしゃい♡」


鷲崎わしざきさんに見送られた。


鷲崎さんの仕事は、イラストレーター。と言ってもフリーで仕事を受けてる形じゃなく、デザイン事務所に所属して、基本的にはそのデザイン事務所が引き受けた仕事をこなすっていうことらしい。


基本的には在宅勤務で、打ち合わせの時なんかには会社に出向くって形だった。だから割と時間は都合がつくそうで、夏休み明けからは登校時の交通当番もすることになるって言ってた。


『交通当番』は、特に危ないと思われてる交差点とかに旗を持って立って、登校してくる子供たちを誘導する役目だ。二ヶ月に一度くらいの頻度で当番が回ってくるらしい。僕は頻繁に休めないから免除してもらってるけど。


ただ、沙奈子と千早ちはやちゃんの件でも学校にはお世話になったから、できれば僕も協力したいと思うんだ。


「そんなの、それぞれ事情があるんだから気にしなくていいんじゃないですか。私だって時間の都合がつかなかったら引き受けてませんよ」


と鷲崎さんは言ってくれる。それがありがたい。


沙奈子の通う学校のPTAも、そういうのを強要はしてこないから助かってる。学校によっては、半ば強制的に参加させられるところもあるって聞いた。だけど、そうやって強制しないといけないっていうのは、『積極的に協力したいと思える学校じゃない』っていうのもある気がするんだ。だってこっちの学校は、割とみんな、積極的に協力してくれてるらしいから。


どうしてそうなのかは、分かる気がする。なにしろ沙奈子と千早ちゃんの一件があったからね。あれはとても大きな意味があったと感じてる。あれくらい丁寧に、親身になって対処してくれたら保護者の方だって『学校に協力しなきゃ』っていう気になるんじゃないかな。そう思えない人ももちろんいるとしても、そんな風に思ってくれる人も増える気がする。


時々、PTA会長とかが何やら暴君みたいに君臨してるなんて話もあったりするのは、誰もやりたがらなくて引き受け手がいないから結果として権力が集中してしまうっていうのもあるのかなって思ったりもする。


でも、だからってそうやって人の上に君臨して我儘放題に振る舞ってるような親を持った子供って、そんな親の姿から何を学ぶんだろう。他人を自分の思うままに操るのが当然、なんていう考え方を学ぶとしたら、それはすごく怖いことなんじゃないかな。



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