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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百五十 結人編 「教えた気になってる」

七月二十日。金曜日。


子供が未熟なのは、当然だと思う。だって子供なんだから。初めて経験することが大人よりずっと多いんだから。


そんな子供に、まともにヒントも与えずに自分たちだけで問題を解決させようとして、それで常に正しい答えを見付けられるはずだと思う方がどうかしてるって、僕は感じるんだ。


その為に『道徳』とかを教えるのかもしれないけど、そもそもそれが正しく理解できてるかどうかも分からない状態で解決を丸投げするのは無責任じゃないの?。


何より、道徳の教科書で教えられたことをどう実際の事例に当てはめたらいいのを教えずに、教えられた道徳について間違った解釈をしてるかもしれないのにそのまま任せてしまうのが、本当に正しいの?。


僕にはそうは思えない。


そして実際に、千早ちゃんは『間違った対応』をした。自分にとって不都合な相手に理不尽な真似をするのが正しい解決方法だと思い込んで、沙奈子にきつく当たったんだ。


それは、千早ちゃん自身が言ってたことだ。


「いや~、あの頃ってさ、相手を怒鳴ったり叩いたりして自分の意見を押し通すもんだと思ってた気がするんだ。お母さんやお姉ちゃんが私にそうしてたから、そういうもんだってさあ。


でもでも、今はそうじゃないって分かってるよ?。怒鳴ったり殴ったりすんのはただのワガママだってさ。世の中が何でもかんでも自分の思った通りになるなんておかしいって、ピカお姉ちゃんが教えてくれたんだ。だからもう大丈夫。私、怒鳴ったり殴ったりしないようできるよ。よっぽどじゃない限り」


って。


千早ちゃんだってそれまでも道徳についてはそれなりに教えられてきてるハズなのにそれだったんだ。沙奈子との一件があるまで、彼女はずっと思い違いをしてた。


他にも、『道徳なんて』と鼻で笑う人も決して少なくないよね。それってつまり、


『なぜ道徳が大事なのかっていうのを理解してないのに、その人の周りの大人たちはそれをフォローもせずにそのままにしてきた』


っていう何よりの証拠じゃないの?。その人がちゃんと理解するまで丁寧に教えてこなかったってことじゃないの?。


それを、『理解しない方が悪い』と放ってきたんじゃないの?。


だけど、千早ちゃんは、それをちゃんと理解できるまで学校や星谷ひかりたにさんや山仁やまひとさんたちが丁寧に教えてくれたんだ。だから今の千早ちゃんになれた。


イジメを防ぐにはそれが大事なんだって、僕も学んだ。教科書を使って道徳の授業をするだけで『大事なことを教えた気になってる』だけじゃダメなんだって教わったんだ。


『教える』っていうのは、相手がそれをしっかりと理解したのが確認できて初めて『教えた』って言えるんだろうなって。



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