七百四十九 結人編 「間違った解決方法」
七月十九日。木曜日。今日は、市内で最高気温39.8度を記録したそうだ。僕たちが住んでる辺りはそれよりはちょっとだけマシだけど、それでも大した差はないかな。直感的に命に係わるそれだと感じる暑さだった。
暑さについてはもうこういうものとして気を付けるしかないのでさて置こうと思う。
それよりも、沙奈子と千早ちゃんの件をはじめとしたいろいろなことに触れてきて僕なりに感じたことは、
『イジメは、深刻な状態になってから対応したんじゃ遅い』
っていうことなんだ。
もし、沙奈子が千早ちゃんにきつく当たられていたことを学校側が『ただの子供同士のケンカ』ということで対応せずに放っていたら今頃はどうなっていたかって考えると、正直、ゾッとしてしまう。
多くの大人はこういう時、『子供のケンカは子供だけで解決するべき』と思うかもしれないけど、僕はそれは違うと感じてしまった。
もちろん、何もかも大人が解決してしまうのも違うのかもしれない。だけど、解決に必要なヒントも示さずに見て見ぬふりはただの『逃げ』だと思うんだ。
『子供のケンカは子供だけで解決するべき』という考え方を、面倒なことに関わりたくない大人の『甘え』に利用してるだけなんじゃないかって。
自分が子供の頃のことを思い出しても分かる。あの頃の僕は間違いなく『未熟』だった。自分に降りかかってくる問題の解決方法を知らず、どうしていいのか分からないから見ないふりをしてただ逃げてただけだった。それが一番、『適切な対処方法』だと思ってた。
でも、それで本当に何かが解決したかと言えば、何も解決していないと思う。状況が変わってただ何となくうやむやのままで過ぎ去っていっただけだ。
もしかしたらそれを『時間が解決してくれた』と言うのかもしれないけど、正直、僕には違和感しかない。だって僕は、そうやって嫌なことから目を背けて見ないふりをするだけの人間になってしまっていたから。
当然、何でもかんでも積極的に解決していけるようなすごい人間になれるとは思わない。ただ、見て見ぬふりをしちゃ余計に大変なことになるような問題まで見ないふりをするような人間になってしまっていたことは、決して好ましいことだとは思わない。
そして僕がそうなってしまったのは、大人が、問題の解決方法のヒントさえ提示してくれなかったことにあったと思うんだ。
『子供同士のことは子供だけで解決するべき』
とか言って。
問題の解決を子供だけにやらせてて、本当に上手くいくのかな?。子供が間違った解決方法を思い付いてしまう危険性については、考慮しなくていいのかな?。
その『間違った解決方法』の最たるものの一つが、『相手をイジメる』ことだと思うんだ。
イジメが始まるきっかけはそれぞれ星の数ほどかもしれなくても、それが始まった理由のほとんどは、
『そうするのが正しい』
と、思ってしまったからじゃないのかな。




