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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百四十八 結人編 「動きたくないから」

七月十八日。水曜日。なんかもう、こうずっと続くと異常なのかどうかもよく分からなくなってくるな。この暑さ。




結人ゆうとくんのファンクラブの子たちに沙奈子が呼び出されたっていう話については、ファンクラブの子が謝ってくれたし、今日はもう特に何もなかったことでたぶん終わったんだろうなって感じた。


「今日はどうだった?」


と、沙奈子を迎えに行った時に千早ちはやちゃんに聞いても、


「大丈夫だったみたいだよ。ファンクラブの子らも大人しくしてたみたいだし」


ってことだった。


正直、ホッとする。話に聞いてた限りでも大したことじゃなかったようには思えてても、やっぱり自分で現場を見てたわけじゃないから、その女の子たちがどういう目で、どういう表情で沙奈子を見てたのが分からないし、そういう意味では不安もあった。


せめて自分の目でその時の様子を確認してたら、本気で誤ってくれてるのかどうかも分かったかもしれないけどね。


沙奈子の様子をずっと見てたからか、最近割と、相手の表情でどの程度本気かみたいなのが分かるようになってきた気がする。これは、絵里奈や玲那と付き合ってきたことで相手の顔を見るっていうのに少し抵抗が減ってきたのもあるのかしれない。


とにかくそういうのが何となくだけど分かる気がするんだ。


とは言え、今回は直に見ることができなかったから、その辺りの判断は千早ちゃんや大希ひろきくん頼みなのか。


だけど、千早ちゃんも攻撃的な相手の様子っていうのを散々見てきてるわけで、それと比べてどうなのかっていう形では割と見抜けそうなのかな。


それでなくても、四年の時に沙奈子と千早ちゃんの件で丁寧に対応してくれた学校だから、もし今回のこともなにかエスカレートするようならきっと対処してくれると思う。


イジメだと確認できないと動かない学校もある中で、『イジメだと断定はできないけどそれが疑われる』っていう段階で動いてくれるというのは本当にありがたいな。




で、結論から言うと、この件についても取り越し苦労に終わったんだ。ファンクラブの女の子たちは本当に沙奈子に言いがかりをつけてしまったことを反省してくれたらしくて。


千早ちゃんの時もそうだったけど、やっぱり傷が浅いうちに対処すれば相手の方も鞘を治めやすいってことなのかもしれない。


本当に深刻な状態になってからだと、引くに引けない状態だったりすることもあるんじゃないかな。


イジメだと断定できないと動かないというのは、『動きたくないからイジメだと認定しない』っていう怠慢を生んでしまう可能性があるのかも。



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