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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百四十五 結人編 「ファンクラブの中で」

「なんかさ~、最近、鯨井くじらいのファンクラブの中で内紛が起こってるみたいなんだよね」


出来上がったオムライスをみんなで食べてる時、千早ちはやちゃんがそんなことを言い出した。それに玲那が反応する。


「内紛?」


「うん。『ぬけがけしない』っていうルールを破った子がいて、その子を支持する子と、その子のことを許せないって子に分裂しちゃってるらしいんだよ」


「なんだそれ」


玲那と千早ちゃんが話してるそこへ、星谷ひかりたにさんも加わる。


鯨井くじらいくんの家に直接手紙を届けている人がいて、それが『抜け駆け』だという話になっているようです」


との言葉に僕も玲那もピンときた。


「それって、織姫が言ってた…?」


「ああ、たぶんそれだ」


以前から時々、消印のない結人ゆうとくん宛の手紙がポストに投函されてるってことがあると鷲崎わしざきさんが言ってた。結人くんは、まったく興味を示さずに、任せておくと片っ端から捨ててしまうからってことで、今は鷲崎さんが保管してるって。


「あったく、鯨井のやつ。失礼極まりないな」


千早ちゃんは『憤懣やるかたない』って感じで首を竦めるけど、大希くんは、


「興味のない人から手紙をもらっても正直困るっていうのは分からないこともないかな」


って。それに対して千早ちゃんは。


「ああ、そういやヒロも時々手紙渡されたりしてるよね」


そうなんだ。まあ、大希くんなら分かる気もするけど。


ただ、それはさておいても、『内紛』という表現は穏やかじゃないな。そんな僕の代弁をするかのように玲那が言った。


「しっかし、『内紛』ってなに?。ケンカになってるってこと?」


千早ちゃんも応える。


「あんまり派手にやり合う訳じゃないけど、それなりには険悪な雰囲気になってるみたいだよ。分裂も有り得るんじゃないかな」


「は~、小学校でもそういうのあるんだね」


「みたいだね~。私は興味ないけどさ。女子とつるむってこともあんまりないし」


そこに大希くんが。


「千早はそういうの嫌いだもんな」


「そ~なんだよね。いかにも女子らしい、連れションとか、意味分からん」


「連れションって…」


さらに玲那も加わって。


「あ~、私はどっちかっていったら千早に近いかな~。女の子が群れてるのとか、正直、冷めた目で見てたし」


「玲那さんの言うの、分かるわ~。あれってなんなんだろうね?」


「マジレスすると、生存戦略の一つらしいよ。どうしても体力的に不利な分、群れることで身を守るっていう」


「そうかも知んないけど、あんまり見てて気分いいものじゃないよね」


千早ちゃんがそう言うと、星谷さんが。


「千早。分かってると思いますが、本人たちの前ではあまりそういうの言わないようにしてくださいね。トラブルの素です」


「うん、分かってるよ。おねえちゃん」



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