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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百四十四 結人編 「本当に大事なことを」

七月十五日。日曜日。今日も明らかにおかしい暑さが続いてる。危険を感じる暑さだ。冷房は点けっぱなし。昨日も買い物は日が暮れてから行くようにした。


「絵里奈も、本当に気を付けてね」


パートに出ようとする絵里奈にそう告げた。


「はい。もちろんです。帽子の中に保冷剤を入れて、首にも保冷剤を当てていきます。あと、電動アシスト自転車にしたのは正解でした。それだけでもかなり違います」


「そうか。思い切って買ってよかったな」


「ええ。こういうことには惜しまない方が良いって実感しました」


「確かに」


なんてやり取りの後、いつものように沙奈子と一緒に掃除と洗濯をする。でも、ベランダに洗濯物を干すだけの間だけでも汗だくになってしまった。


「シャワーで汗を流すけど、沙奈子も一緒に入る?」


そう聞くと、「うん」と当たり前みたいに頷いてくれた。体もますます変化してきてるのに、それ自体にすっかり慣れたのか、また平然とするようになった。もしかするとそういうのを自覚させるタイミングみたいのを逃したのかなとも思わなくないけど、まあいいか。本人が気にしてないのなら。


お風呂場で水を浴びると、きゃあきゃあはしゃぐ訳じゃないけど、それでも嬉しそうに僕に抱きついたりもする。それがこの子からの信頼の証だというのが感じられて僕も嬉しい。


シャワーから上がると、玲那が、


「いいな~…」


ってビデオ通話の画面の向こうで羨ましそうに指をくわえてた。ただのポーズだと分かっててもちょっと申し訳ない気もする。また一緒にシャワーとかしてあげられたらいいな。


それから沙奈子を膝に座らせて、午前の勉強をする。


何気なく見ると、窓の外がものすごく明るくて、とんでもなく暑そうだった。


それでも、千早ちはやちゃんたちはやってくる。無理しない方がと言ったんだけど、星谷ひかりたにさんも一緒だからということで。だから少し室温を下げておいてあげた。


で、来た途端、


「ぐお~っ!、溶けるわちくしょ~っ!!」


と千早ちゃんが。


でも部屋にあがって扇風機に前に来ると、


「うひ~!、生き返るぅ~」


だって。Tシャツの胸元を指でぐっと引っ張って大きく開けて、風を取り込んでる。女の子として見れば酷い格好だと言えるかもしれないけど、気持ちは分かる。


「おまえな~」


と千早ちゃんにツッコむ大希ひろきくんだって、呆れたような言い方してても顔は笑ってる。星谷さんも苦笑いだけど、何も言わない。


それはたぶん、千早ちゃんが本当に大事なことをちゃんとわきまえてるからじゃないかな。人を傷付けたり苦しめたりしないっていうね。だからそれ以外のことは大目に見てもらえるんだと思う。



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