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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百四十二 結人編 「強い芯が」

七月十三日。金曜日。今日は薄曇りだけど、気温は高くなりそうだから注意しないといけないなと朝から思った。実際、通勤中も、バスの中の熱気で『これはヤバいな』と思ったし。冷房は全開のはずなのに、涼しいのは風が当たってる部分だけで、正直、かなりきつかった。


絵里奈は、パート先の漬物屋さんに通うのに、電動アシスト自転車を買ったそうだ。以前から相談があって、僕は、


「金銭的に無理がなかったらぜひ買えばいいんじゃないかな」


とは言ってた。幸い、フリマサイトでの売り上げは、今さらあれこれ触れる必要もないくらい順調で、贅沢さえしなければ、二人の方の生活に支障はない状態だったし。


沙奈子の人形のドレスのファンも増えてるらしい。だから、出品すると途端に売れてしまうので、競争になってるんだとか。そこで、『受注生産』という形を取ることになったと言ってた。


金額も、結構な強気に出てるそうだ。それでも半年待ちになってしまったとか。一着作るのに約一ヶ月かかるから仕方ないのかもしれないけど。


もし、完全にそれだけに集中すれば十日くらいで作れるみたいでも、とにかく沙奈子には学校があるからね。




なんてこともありつつ、僕たちはすっかり平常に戻ってた。でも、ニュースでは相変わらず連日、豪雨災害について報道されてる。気が重い。


ただ、そればかりに気を取られてると日常生活にも支障が出てくるのも分かってる。だから実際には、自分の身近でそういうことがあった時に感じ取れればいいんだろうなって。


それこそ、テレビとかができる以前には、遠く離れたところでの事件や災害ってこんな風に詳しく知ることもほとんどできなかったことだろうから、昔にはこうやって胸が痛むなんてこともなかったわけだし。


そういう意味では、確かに今は情報過多なんだろうな。昔なら知るはずのなかった情報を知ってしまうというのは。


でも、だからこそ、自分の身近で起こってることを大切にしたいとも思う。自分の手の届く範囲で、自分の手を振り払わないでいてくれる相手のことは、自分の力が及ぶ限り。


沙奈子も絵里奈も玲那も、もうある程度は自分で自分に向き合えるようになった。僕が一方的に助けなくても、見守るだけで大丈夫になった。沙奈子なんてすっかり別人みたいだと思う。感情を上手く表せなくなったのは残念だけど、それでもここに来たばかりの頃のあの子とはまるで違う。はっきり、『強くなった』のが分かるんだ。


相変わらず、見た目には線が細くて強く触ったら壊れてしまいそうにも見えても、その奥にはしっかりとした強い『芯』があるのが分かる。僕たち家族が平穏なら、この子は何も心配要らないのが分かるんだ。



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