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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百三十七 結人編 「他人から見たら」

七月八日。日曜日。昨夜遅くまで雨は降ってたみたいだけど、朝にはやんでいた。それどころか、青空が。


警報とかも軒並み解除されてて、ホッとした。


ただ、大きな被害が出たというニュースを見ると、素直に喜べなかった。


それでも、僕の大切な人たちに被害がなかったのは、やっぱりうれしい。


雨が続くようなら中止にしようかという話になってたいつもの昼食づくりも、予定通りできることになった。


「沙奈~!、無事でよかったよ~ん!」


千早ちはやちゃんが玄関を開けるなりそう言って沙奈子に抱きついてきた。昨日はみんなでビデオ通話を繋いだままにしてたからお互いの姿は見えてたけど、それでも心配してたであろう彼女なりの正直な気持ちの表れなんだろうなって思った。


「もしもの時は、私が沙奈のこと守るからね~!」


だって。千早ちゃんって、本当に優しい子なんだな。それがあんなに荒んでたなんて、悲しいことだって気がする。


「千早はホントに沙奈のことが好きなんだな」


星谷ひかりたにさんと並んで玄関でその様子を見てた大希ひろきくんが呆れたようにそう言った。だけどもちろん、本気で呆れてるとかじゃないと思う。


「あったりまえだよ。沙奈っていい子じゃん。ヒロだって沙奈のこと好きでしょ?」


「まあね」


なんてやり取りが、すごく自然に行われてた。大希くんも、全然、恥ずかしがったりすることなく沙奈子のことを『好き』って言ってくれた。だけどそれだけに、恋愛として好きっていうんじゃなくて、あくまで友達として好きっていうことなんだろうなっていうのも分かってしまう。


でも、大希くんくらいの年頃の男の子が、『女の子のことが好きか』って聞かれて躊躇うことなく『そうだ』って言えるのは、何気にすごいことのような気がする。普通は必死に否定したりするんじゃないかな。


大希くんの器の大きさを改めて感じる。


たとえそれでからかわれても、気にする必要なんかないっていう自信の表れなんだろうな。強いなあ。


ただ、星谷さんは、大希くんが沙奈子のことを好きだっていう発言が出る度に、微妙に困ったような表情になるのも、申し訳ないけどちょっと面白いと思ってしまった。


大希くんの『好き』が『LOVE』のそれじゃないのは分かっててもついつい引っかかってしまう『女心』ってことなのかな。


と、そんなことを気にできるだけの日常が戻ってきたことを実感する。


やっぱり、平和で穏やかなのが一番だよ。


他人から見たら山あり谷ありの方が面白いのかもしれないけど、僕たちの人生は決して他人を楽しませるためにあるんじゃないからね。



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