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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百三十五 結人編 「避難指示」

七月六日。金曜日。昨日からの雨は勢いが衰えないまま降り続いていた。警報も解除されてない。だから沙奈子の学校は休校になるってことだった。


「それでは今日、お願いしていいですか?」


山仁やまひとさんのところに電話して沙奈子を預かってもらうことを確認する。


「はい、お任せください」


と言ってもらえたのがありがたかった。


だけど……。


電話を切ってビデオ通話の画面を見ると、そこには鷲崎わしざきさんの姿が。


結人ゆうとくんも一緒にと思うんだけど、どうかな?」


問い掛ける僕に鷲崎さんは困ったように首を振った。


「聞いてみたけど、ダメでした。『メンドクセー!』って。だから私は結人と一緒に取り敢えず残ります。でも、ホントに危なそうだったら避難しますから、心配しないでください」


だって。


分かってたけど、まだ、信頼されてないんだな。だから、


「もしもの時は星谷さんが手配してくれるって。その時には、引っ張ってでも避難してほしい」


って言っておいた。鷲崎さんも「はい、そうします」と約束してくれた。


「じゃあ、絵里奈と玲那も気を付けてね」


「はい。もちろんです」


「無理はしないよ。お父さん」


と応えてくれたのを確認して、沙奈子に声を掛ける。


「行くよ」


「うん」


頷いた沙奈子を連れて、僕は、激しい雨の中を山仁さんの家に向かったのだった。




で、どうなったかと言えば、この日は取り越し苦労で終わったんだけどね。


僕たちの住んでる辺りでは結局、『避難準備』の情報さえ出なかった。すぐ隣の地区では『避難指示』まで出たのに。地震の時もそうだったけど、僕はまったく意図せずに、災害に対してはすごく強いところを選んでたんだなって思ってしまった。


鷲崎さんと結人くんもそれで無事だったんだから、本当に良かった。


でもその一方で、僕の勤め先の会社がある辺りでは、洪水浸水の危険があるってことでしっかり『避難指示』が出てた。なのに会社からは何のアナウンスもなく、むしろこの前の地震で遅れた分を取り戻すべく指示が出てた。


『避難指示』が出ててもこれだからね。実際に被害が出ない限りは動かないつもりなんだろう。それでいいんだろうかって思ってしまう。


まあそれはそれとして、秋嶋あきしまさんたちに対しては、玲那の方から気を付けるようにって言ってたみたいだ。


「油断とかもそうだけど、無理もしちゃダメだよ」


って釘を刺してたらしい。


幸い、今日のところはみんな無事だった。


ただ、この雨は八日くらいまでは続くという話もある。ということは、少なくともそれくらいまでは油断できないっていうことか。



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