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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百三十四 結人編 「避難指示が出るようでしたら」

七月五日。木曜日。昨日から降り出した雨は、夜にはさらに強くなって、かなりの勢いで降り続いてた。朝方には雨の音で目が覚めてしまうくらいに。


それでも、僕が仕事に向かう頃には少しだけ雨脚が衰えてきたから助かった。


だけど、昼過ぎ、市内の各地に避難指示が出たとスマホに通知が。


「地震の次は大雨かよ……」


誰かが忌々しそうに呟いた。その気持ちは僕にも分かる気がする。正直僕もそう思う。


地震に引き続いて大雨だなんて。


それでも、会社の方は避難とかする気配もない。避難指示が出たくらいじゃ仕事は休みにならない。もしそれで実際に災害が起こって大きな被害が出た時にはどう言い訳するつもりなんだろうなと思ったりはする。


けれどそれは、そうなった時に会社のトップが責められるだけで、僕には関係ない話か。『たぶんここは大丈夫だろう』とタカをくくって事が起こってから慌てて謝罪する。いつもの光景か。


反省っていうものをしないんだな。大人って。


今は大人と言われる年齢の僕ですらそう思うんだから、子供たちはそれこそそういう目で大人を見てるんだろうな。


ただ、仕事が終わって沙奈子を迎えに行った時、千早ちはやちゃんが言った。


「明日、学校が休みになるかもって」


改めて学校から届いてたメールを確認すると、


『警報が一つでも残っていた場合には、休校になります』


となってた。学校はまだそういう形で対応してくれるだけ救いがあるかなとは思った。


たとえそれが、責任を問われたくないからという理由だとしてもね。


危険をおしても無理をするのが美徳だと思われてる部分を世間からは感じる。『この程度で仕事休めるわけないだろ』という意見をよく目にする。


でも正直、そういうのって『自分はこれだけしか寝てないんだ』っていうアピールと同じ臭いしか感じないんだ。


『危険が迫ってても頑張ってる自分ってカッコいいだろ?』


そんな風に言いたいだけなんじゃないかってね。


それで、実際に被害が出た時には、


『まさかこんなことになるとは』


なんて、言わないでほしいとしか思わない。『避難指示』が出てるのに危険だとは思わなかったとか。そんなの、川が氾濫しそうになってるのにそれを見に行って流されて『まさか』って言うのと同じだとしか思わないよ。


そういうこともあって、明日、もし学校が休みになった時には、山仁さんのところで沙奈子を預かってもらう話になった。しかも、星谷ひかりたにさんが、


「この調子では私たちの学校も休校になる可能性がありますので、ここに集まります。その上で、万が一、避難指示が出るようでしたら、全員で避難します」


って言ってくれたんだ。



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