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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百三十 結人編 「両親と同じに」

七月一日。日曜日。今日も朝からすでに暑い。


それはさておき、玲那の言葉は本当に重い。実際に傷付けられて虐げられて苦しみ抜いて、そして壊れてしまった子の言葉だから。


玲那が事件を起こすまでの間に、何が足りなくて、何が必要だったのか、彼女が一番分かってると思うんだ。結人ゆうとを自分と同じにしないために。


取り返しのつかないことにならないようにするために。


『理想論だ!』とか『そんなの無理!』とか言う人はいるかもしれない。だけどそんなことを言う人は、それで放っておいて大変なことになっても責任なんか取ってくれない。と言うか、責任を取りたくないからそういうことを言うんだろうな。そんな人たちが何を言っても僕には届かない。言うのは勝手だし好きにしててくれて構わないけど、


『僕たちの人生に対してあなたたちは何の責任も負ってくれないでしょ?』


としか思わない。


これは僕たちの人生だ。だから僕たちが考える。悔いのないように。


無責任な人たちの言うやり方は、これまで、沙奈子や玲那や千早ちはやちゃんや結人くんを苦しめた人たちがやったやり方だ。それがあの子たちを苦しめた。それを繰り返せという話は聞き入れるわけにはいかない。


現場で、直接、沙奈子に、玲那に、千早ちゃんに、結人くんに向き合ってるのは僕たちなんだ。遠いところから、何の責任も負わずに、あの子たちの顔すら見ずに、あの子たちの気持ちに触れもせずに、好き勝手言ってる人たちの言葉なんて、聞き入れるわけにはいかないよ。


と、いつものように沙奈子と一緒にお昼を作るために来てる千早ちゃんと大希ひろきくんを、星谷ひかりたにさんと玲那と一緒に見守りながら思った。


星谷さんが言う。


「私の両親は、とても素晴らしい立派な方々です。私は二人をとても尊敬しています。ですが、そんな両親の子供である私は、その身の内に『悪』を飼う人間になってしまいました。私の両親でさえ失敗するんです。だからただ漫然と、子供に接してていいわけではないと思います。自身の行いが子供にどのような影響を与えるのかということを大人は常に意識しなければいけない。私はそれを忘れてはいけないと考えます」


彼女の言いたいことが、今なら分かる気がする。


僕の両親は決して褒められた人ではなかったけど、当人たちには悪気はなかったんだと思う。ただ自分たちのしてることがどんな結果をもたらすのかを、客観的に見ることを放棄してきただけなんだろうな。


そして、かつての僕自身を思い起こすに、他でもない僕もまた、ちゃんと考えずにやったら、両親と同じになってしまうのが分かる気がするんだ。



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