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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百十八 結人編 「普段の備えが」

六月十九日。火曜日。今日は千早ちはやちゃんの誕生日。


夜中に、余震と思しき揺れがあったけど、特に不安になるほどのものじゃなかった。


昨日は結局、会社の方も高槻工場の被害が意外なほど大きくてスケジュールの見直しもはかどらず、とにかく今後に予定されていた仕事を前倒しで行うみたいな形を取ったものの、それもスムーズにいかず、殆どまともな仕事にならなかった。


それでも僕が勤めてる本社自体には被害と言えるような被害もなくて、取り敢えず定時までは仕事をしているていを取るしかなかったけど。


正直、僕としてはさっさと退社して沙奈子を迎えに行きたかった。この時には完全に無事で、沙奈子の学校も揺れは大したことが無くて怯えてさえいなかったらしいけど、そういうことじゃなくて、ニュースで流れる被害を見てあの子がどう感じてるかと思うと、居ても立ってもいられない気分だったんだ。


でもまあそれも、結果から言えば山仁やまひとさんの家で千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと一緒にいられたことですごく落ち着いていられたらしいけど。


僕が迎えに行った時も、沙奈子だけじゃなく千早ちゃんと大希くんも普通だった。それだけじゃなく、星谷ひかりたにさんもイチコさんも波多野さんも田上たのうえさんもみんないつもと変わりなくてホッとした。


だけどそれも、僕たちの周りで大きな被害がなかったからだと思う。公式の発表では僕たちが住んでた辺りでは『震度五弱』という話だったのに、実感としては、


「震度四あるかないかくらいだったかなあ?」


って思わず言ってしまうほどだったし。


ただそれ自体も、たまたま僕の会社や沙奈子達の学校がある辺りは地盤が固いのか、地震計が設置されていた辺りよりも揺れが少なかったからかもしれない。


なにしろ、


「いやあ、こっちは確かにかなり揺れたよ。こんなの生まれて初めてだった気がする」


と玲那も言ってたくらいだから。


絵里奈と玲那がいるマンション辺りでは、確かに、


「震度五ってこんななんだ」


って玲那が言うくらいには揺れたらしい。


それでも、家具とかについては絵里奈があらかじめきちんと固定していたことで、立てかけていたものが倒れたりしただけで済んだとは言ってたな。


普段の備えが大事なんだって改めて教えられた気もする。


「私たちはみんな無事で済んでよかったですけど、店の人の親戚の方の家では、倒壊まではしなかったけど家が傾いたりもしたそうです。落ちてきたものに当たって少し怪我もしたとか」


と絵里奈が言ったように、被害を受けた人は実際いるし、亡くなった人もいたとニュースでやってた。


だから、不謹慎かもしれないけど、誕生日パーティーをやる前でなくて良かったとも思ってしまったりしたんだ。



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