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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百十三 結人編 「大きな問題から」

六月十四日。木曜日。今日は何だかちょっと肌寒い気がする。




他人や世間がどう思っていても、僕は結人ゆうとくんのことも『自分には関係ない』で放っておきたくない。確かに彼は決して『良い子』じゃないのも分かってる。何度もケンカとかしてトラブルを起こしてきたのも分かってる。でもそれは、彼だけのせいなのかな?。


僕は自分の両親を許せないと思ってる。既に亡くなってるからもう気にしないで済んでるだけで、もし今も生きてたらそれこそ『二度と顔も合わせたくない』とか考えて、年老いて施設に入ったりしても、会いにも行かないと思う。


僕がそう思う原因は、間違いなく両親にある。理由もなく両親を恨まなくちゃいけない意味は僕にはない。誰かを恨むなんて面倒なこともしたくないタイプの人間なんだ。


そんな僕が、結人くんに対して『恨みは忘れろ』とか、『いつまでも昔のことを根に持つな』なんて言えないよ。彼がああなってしまった原因を大人が作った以上、その責任を彼にだけ押し付けるのは『逃げ』であり大人の側の『甘え』だと今は思う。


沙奈子を見ててそう感じたんだ。こんないい子が他人に愛想良くできなくなってしまう原因を作った側が何一つ悪くないなんておかしいって。


だから結人くんも同じなんだ。


今日の彼の様子も、相変わらずだったらしい。相変わらず無愛想で可愛げが無くて、生意気で。


「いや~、鯨井くじらいのこと見てると昔の自分を思い出しちゃってダメですな~」


なんて、千早ちはやちゃんが言ってたそうだ。沙奈子にきつく当たってた頃の千早ちゃん自身が、かつては結人くんとよく似てたって。


そうだよ。だから結人くんだって、千早ちゃんみたいに変われる可能性はあるはずなんだ。千早ちゃんだって、これまで何度か『よく無事だったな』ってことがあったらしい。結人くんの場合と違ってそれこそ『首を絞められて殺されかけた』っていうのじゃないけど、打ち所が悪ければ死んでいてもおかしくないような、とんでもない状況にあったって話だった。


そんな千早ちゃんが、今は、沙奈子のことをとても気にかけてくれる、すごく力強くて頼りがいのある『友達』なんだ。すごく闊達で、真っ直ぐで、思いやりがあって。


元々、千早ちゃんにもそういう部分があったんだと思う。それをわざわざ身近な人たちが台無しにして彼女を、『他人にきつく当たることで自分の憂さを晴らそうとする』ような子にしてしまってたんだ。


子供が悪いことをすると本人だけのせいにするのは、実はその陰に隠れてる大きな問題から目を逸らすことだっていうのが、今は分かる気がするんだ。



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