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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百十 結人編 「僕はそうする」

六月十一日。月曜日。一応雨は上がってるみたいだけど、どんよりと曇ってる。




昨夜も、鷲崎わしざきさんや結人ゆうとくんと一緒に夕食にした。代わりにということで鷲崎さんからは食材の差し入れやおやつの差し入れがある。


「そんなに気を遣わなくてもいいよ」


とは言うんだけど、


「いえ、それじゃホントに申し訳ないですから!」


って言ってくるんだ。


こうやってお互いに気を遣うことができるっていうのは、どっちが先にって言うよりも、お互いに『そうしたい』って思える者同士だからこうやって再開できたっていうのもある気がする。もしそうじゃなかったら、僕は彼女に対して『こっちに引っ越して来たらどうかな』みたいに言ってなかった気がする。そうすれば今の状況もなかったんだ。


鷲崎さんが言ってた。


「私、こうして先輩に呼んでもらってなかったら、向こうで一人で、孤軍奮闘しなくちゃならなかったと思います。もしそんなことになってたら、正気でいられたかどうかも自信ありません。先輩は本当に私の恩人なんです」


<恩人>なんて大層なものになったつもりはないけど、彼女がそう思えるくらいに救われたのなら、僕にとっても何よりだと思う。


他人を気遣うのなんて馬鹿馬鹿しいと思う人も多いかもしれない。だけどそんな風に思いながら自分は他人に『気遣われたい』と思ってるなら、それはズルいんじゃないかな。気遣われたいと思うのなら、まずは自分が気遣うのが筋なんじゃないかって今は思う。もっとも、以前はそんなこと、僕自身考えてなかった。そんな僕が言うのはおかしいのかもしれないけどね。


だから他人に対して『そうしろ』なんて言えない。でも、『僕はそうする』とは言えるかな。他人がやらなくても、僕はそうする。


鷲崎さんのことも、結人ゆうとくんのことも、これからも気遣っていきたい。だってそれが僕にできる唯一のやり方だから。


僕には権力も誰かを動かす大きな影響力もない。それでも沙奈子をここまで守ってあげることができた。それは僅かだけど僕にとって自信になってる。


沙奈子の時にそうしたように、鷲崎さんと結人くんに対しても同じようにしようと思う。


僕のやり方を二人に押し付けるんじゃなくて、でも僕のやり方で二人と接するんだ。


きっとまた何年もかかると思う。好ましい結果になるかどうかも分からない。でもそうするんだ。


そうすることが僕自身にとっても自分自身を納得させることに繋がると思うし。


ただの自己満足だったとしても構わない。そういうのは結局、後になってみないと分からないだろうから。



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