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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百九 結人編 「考えることを放棄して」

六月十日。日曜日。今日はまた雨。本当に雨が多いな。




昨日、玲那が言った『謎の自信』っていうのは、本当にいろんな場所で当てはまる気がする。


万引きをしてもばれない自信とか、イジメをしても自分は責められない自信とか、痴漢をしてもつかまらない自信とか、犯行予告をしても捕まらない自信とか、脅迫しても捕まらない自信とか、飲酒運転とかの無謀運転をしても事故を起こさない自信とか、小さな子を殴っても死なせない自信とか、本当に意味の分からない自信に憑りつかれて、大変なことを、取り返しのつかないことをするんだ。


自信を持つのは確かに大事なことかもしれないけど、しちゃいけないことをやれてしまう自信っていうのは本当に怖い。だってそれの所為で、皆が不幸になるんだよ?。


万引きがばれて、イジメを訴えられて、痴漢で捕まって、犯行予告とか脅迫で捕まって、飲酒運転とかスピードの出し過ぎで事故を起こして、小さな子に折檻して死なせて、それで誰が幸せになるんだろう。


僕には分からない。


だったらそんなことに対して自信なんか持たなきゃいいのにって思ってしまう。


人を傷付ける行為に対する自信なんてさ。


星谷ひかりたにさんも言ってたな。


「私はかつて、自分の考えることだけが常に正しくて、誰もが私に従うのが当然で、私の考え方で誰が傷付くとしてもそれは、『正義のためには必要な犠牲』と考えていました。だけど今では、そんな自分が恥ずかしくて仕方ありません。


世間では、ただひたすら自信を持つことが推奨されますが、『何に対して自信を持つのか』というのもよく考えないといけないと思います。他人に対して攻撃的であったり、他人の安全や安心や穏やかな生活を脅かすような行為について自信を持つというのは非常に危険なのです。この事実を知ることができて、私は本当に良かったと思います。


また、考えすぎることをさも恥ずかしいことのように言う風潮もあるようですが、私は、考えることを放棄して人間に未来はないとさえ思います。人間は牙も爪も強靭な肉体も捨て、ただひたすら脳を肥大化させ思考力を高めることで生き延びる選択をしました。そして実際にそれによって繁栄を築き上げてきたんです。考えすぎて失敗することもあるのは事実でしょうが、だからといって考えることを疎み、嘲笑うという行為には、嫌悪感しか覚えません」


確かに、僕や星谷さん、と言うか、たぶん沙奈子も絵里奈も玲那も、山仁やまひとさんもものすごくいろんなことをひたすら考えてその中から答えを見付けてきたタイプだと思う。だから『考えない』というのは、僕たちみたいなタイプにとっては逆に危険なことだと思うんだ。



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