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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百七 結人編 「僕自身のため」

六月八日。金曜日。雨があがってたと思ったらまた降り出した。




「おかえりなさい!」


今日も、沙奈子と一緒に帰ってきた僕を鷲崎わしざきさんがまた出迎えてくれる。そうできない絵里奈と玲那の代わりに。


玲那と出逢って彼女を受け入れてなければ、『事件』に巻き込まれることもなかった代わりにきっと絵里奈とも結婚してなかったし、こうやって鷲崎さんと再会できてもやっぱり受け入れられてなかった気もするんだ。


それと同じことが、結人ゆうとくんとの出逢いでも起こる予感がある。


もちろん具体的な根拠とかがあって言ってるわけじゃない。今までのことから感じるただの勘でしかない。


だけど、そういうのが結果としてどういうものを招くのか分からない以上は、結局は自分の勘みたいなものを信じるかどうかって話でしかないとも思うんだ。そして、自分の選択に責任を持つかどうかっていう。


沙奈子のことは、正直、ただ一方的に押し付けられただけだった。あらかじめ『預かってくれないか?』みたいに聞かれてたらきっと『無理』と応えてたと思う。


でも、この子が来てからのことは、この子を追い出さなかったことも含めて僕自身の選択だった。結果的に選ぶしかなかったというのはあったとしても、それを選択できたことは本当に良かったし、一人で気ままに生きられなくなったことについても何の後悔もない。むしろそっちを選ばなかった自分を褒めたいくらいだ。


結人くんのことも同じだと思う。


館雀かんざくさんや波多野さんや田上たのうえさんの家族とは間違いなく違う。


僕の力には限度がある。小さくてひ弱で頼りない力だ。その中でできることをと考えたら、どうしたって取捨選択が必要になる。『全ての人を平等に』っていう気持ちは尊いものかもしれなくても、自分の器のわきまえずに手を広げたってそれはただの八方美人に過ぎないんじゃないかな。


館雀かんざくさんや波多野さんや田上たのうえさんの家族じゃなくて敢えて結人くんを選ぶ理由。それはやっぱり、彼に対して僕自身がある種の共感を覚えてるからっていうのもあるかな。沙奈子や玲那のことを経験したことで僕が自覚した『僕自身』と結びつく何か。


彼は沙奈子にも似てるし、何より僕と似てる気がして仕方ない。彼は、僕自身が辿ってたかもしれない可能性の一つだっていう気がすごくしてる。


僕が彼に拘ってるのは、もしかしたら『子供の頃の僕』を救いたいからなのかな。


そう。それは決して善意でも博愛でもなく、ただただ『僕自身のため』なんだ。



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