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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百五 結人編 「結局は大人にとっても」

六月六日。水曜日。昨日から降り出した雨は、今日も一日降り続いた。




合わない人と無理に一緒にいる云々の話については、実は鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんの話についても当てはまることだと思うんだ。


結人くんは割とぶっきらぼうで思ったことを口にするタイプみたいだから、もし、鷲崎さんと一緒にいるのが本当に嫌だったらたぶん一緒にはいないと思う。逃げ出して(本人は逃げ出したことなんて認めないと思うけど)、もっと悪い状況になってたんじゃないかな。


彼が鷲崎さんと出逢えたのは、きっと大きな幸運だった。だからこそそれを逃しちゃいけない気がする。それを活かさないといけない気がする。それを活かすのが、彼を救うことになる気がする。


そして、彼が救われることが、鷲崎さんのためにもなるはずなんだ。




夕方。仕事を終えて沙奈子を迎えに行くと、星谷ひかりたにさんが言った。


「六月十六日の土曜日に、いつもの旅館で、私と、千早ちはやと、沙奈子さんの合同誕生日パーティーを行うことを予定していますが、よろしいでしょうか?。沙奈子さんにはすでに、千早が伝えて、了承をいただいています」


そうだ。先月、沙奈子の誕生日の直前にあの『事件』があったことで、みんなで賑やかに誕生日パーティーをするのは控えてたんだ。それで様子を見て、できたら星谷さんと千早ちゃんの誕生日パーティーと一緒にしようかっていう話になってた。


「私はいいよ!。絵里奈もお父さんもいいよね!?」


玲那が前のめりになって言う。もちろん僕も反対する理由なんてないから、


「はい、喜んで」


って答えさせてらった。


日付にしてもたぶん、その辺りになるだろうなと思ってたから、あらかじめ心づもりもしていたし。


あんな事件がなければ普通にみんなで祝ってもらえてたのに、本当にタイミングが悪いな。


それでも、沙奈子自身は、僕たち家族だけで本当にささやかに、小さなケーキを前に「おめでとう」と言ってもらえただけで満足したらしいけど。


元々、自粛なんてする必要もなかったのかもしれない。ただ、僕たち自身が、そうやって賑やかにお祝いする気分になれなかったんだ。


そして沙奈子も、学校での雰囲気も含めて、周囲の空気を読んでしまったみたいだ。


そうやって、子供に空気を読ませて遠慮させてしまうこと自体が、大人として情けない。あの子たちを守り切れてないっていう気分にもさせられる。


子供が、やたら周りに気を遣って、のびのびと生きられない世界なんて、結局は大人にとっても生き難い世の中なんじゃないかって僕は感じるんだ。



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