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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百一 結人編 「気持ちを確かめ合って」

六月二日。土曜日。今日も割と天気はいいようだ。


そこで、久しぶりに水族館に行くことにした。


「水族館に行く?」


と尋ねると、沙奈子も嬉しそうに「うん」と頷いてくれた。


「うひひひひ、すいぞくか~ん!」


と玲那もやけに嬉しそうだ。人形のギャラリーの喫茶スペースでゆっくり僕と話をするのも楽しいけど、たまにはこういうのもいいらしい。


本当はアニメのイベントなんかにも一緒に行けたらと思ってても、それを僕たちに押し付けようとしないのもこの子なんだ。


『一緒にアニメを楽しみたい』っていう気持ちや感情を押し付けてこないからこそ一緒にいられるっていうのもあるかもしれない。そこで玲那が自分の気持ちや感情ばかり押し付けてきてたら、ここまでこの子のことを大切に想えた自信は、正直ない。


逆に、僕たちの気持ちや感情ばかりをこの子に押し付けないから、玲那の方もかえって落ち着いていられるんだろうな。


よく言われることだけど、そういうのって『お互い様』なんだと思うんだ。


お互いにそんな風に思えるから、それを自然にできる相手だから無理なく一緒にいられる。


アニメとかのことについては、同じ趣味の友達とで楽しめばいい。いくら家族だからって、いくら親しい相手だからって、何もかも合わせることなんてできない。だって、『別の人』なんだから。そしてそれは、親子でもそうだと思う。


ましてや『夫婦』なんて、本来は他人だからね。生まれも育ちも違って、だけどたまたま出逢えただけのまったくの他人なんだから、何もかもが合わせられなくて当然なんだよ。


僕と絵里奈だってそうだ。彼女とはたくさんの部分で共感できるし価値観みたいなのを共有もできる。考え方だって似てるしいっしょにいてすごく気が楽だ。だから嬉しい。一緒にいられるのが幸せなんだけど、やっぱり僕と絵里奈は『別の人』なんだよね。それを忘れたくない。そして絵里奈もそれを忘れないから『気が合う』んだと思う。


「こうやって家族みんなで楽しめる場所があるのっていいですよね」


ちょうど僕が考えてたようなことを、絵里奈も考えてたみたいだ。こういう部分からも、彼女と感性が近いんだって感じる。でも、そこで油断して自分の思い通りになるって考えてしまうと、きっと躓くんだろうな。


何気なく顔を見合わせて、薄暗い展示スペースの中で、ごく自然に当たり前みたいに軽くキスを交わしてた。彼女の唇が触れた瞬間、ふわっとした柔らかい気持ちになる。


そうして僕と絵里奈は、お互いに自分の気持ちを確かめ合ってた。こうやってたまにしか会えなくても、お互いに『好き』なんだってね。



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