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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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七百 結人編 「わざわざ自分から」

六月一日。金曜日。昨日の雨はすっかりやんで、今日は朝からいい天気だった。


感情に任せて生きるのは、楽そうに見えるかもしれない。自分の気持ちを何より優先できたら嬉しいと思うかもしれない。


だけど僕はそれじゃマズいと思うんだ。その場その場では楽そうに見えても、結局は状況を悪くすることの方が多いと思う。


だってそうだよね?。その時の自分の感情ばかりを優先したら、相手の感情を逆撫ですることの方が多いと思うし。


『自分の感情を優先して欲しい』と思ってるのは、相手もそうかもしれない。それでお互いの感情がぶつかり合ったら、結局はどちらかが抑えなきゃいけないんだ。その時、自分の感情ばかり優先してもらいたがったら、周りからどう思われるかな。


ただの『我儘な人』って思われないかな。そうなったらもう、他人から悪感情を向けられて、大事にもしてもらえなくなって普通だよね。


僕が自分を抑えて我慢をするのは、自分が幸せになるためだよ。他人のためとかそういうんじゃない。


僕は自分を抑えてるから、こうやって毎日穏やかに過ごせてるんだっていう実感があるんだ。他人と諍いを起こさずに、他人から無暗に悪感情を向けられずに過ごせてるからね。


何よりそれが、沙奈子や絵里奈や玲那を守ることになってると思う。


例えば僕が自分のその場の感情を優先して誰かと揉めたとする。そしたらその相手は、僕じゃなくて、沙奈子に仕返ししようとするかも知れない。


それは卑怯なことだと僕も思う。だけど、『感情が最優先されて当たり前』なんだったら、そういう『卑怯なことをしてでも仕返ししたいっていう感情』も認めてもらえて当然って、普通は考えるよね。自分に害のない感情だけ認めるなんて、そんな都合よくいかないよね。


そんな都合のいいことが当たり前に起こるって言うのなら、それこそが『綺麗事』だと僕は思うんだ。


なんてことを今、ずっと考えられているのも、他に触れなきゃいけないような特別なことが何も起こってない証拠なんだ。


だから僕は、『他人を傷付けてでも』って思ってしまいがちな自分の感情を抑えるようにしてる。たとえそうしてても、事故とか事件は勝手にやってくる。だったら、わざわざ自分から招く必要もないと思うんだ。


自分から事故とか事件とか、他人との諍いとか、そういうのを招くようなことをしておいて『こんな世の中なんて』言ったり、誰かに腹を立てたりっていうのはおかしいんじゃないかな。



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