表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
696/2601

六百九十六 結人編 「巻き込むことだって」

五月二十八日。月曜日。今日は朝から曇ってるな。


『復讐する権利』を認めるべきだと思ってる人たちは、僕みたいな考え方を『綺麗事だ』と馬鹿にするだろうなって分かってる。だけど、これは、実際に『復讐しようとした人を間近で見た』からこその実感なんだ。現実には、復讐する権利を認めるべきだと思ってる人たちは、実は味方にはなってくれない。そういう人たちは、自分がスカッとする復讐劇を見たいだけだから。


それをつくづく思い知らされた。


結人ゆうとくんが大人への復讐を果たしたってきっと同じだ。彼を直接殺そうとした母親に復讐を果たしたって、きっと彼を攻撃して罵る人間はいる。それが分かる。ましてや、彼が虐待を受けていた時に、それを見て見ぬふりをして見逃してきた人間に復讐したりしたら、それこそ結人くんだけが悪者にされて、『ガキでも死刑にしろ!』って言われるのは目に見えてる。そして、『被害者や遺族がこのガキに復讐する権利を認めるべきだ』って言い出すのも目に見えてる。復讐を果たしたのは、彼の方なのにね。


結局、その程度なんだよ。『復讐する権利』なんて。どこまでを対象に加えるかで、態度が百八十度変わってしまうんだ。ましてや自分が復讐の対象になると分かった途端、『自分には関係ない!』って言い出すに決まってる。


その程度の覚悟もないから、『復讐する権利を認めろ』って言えるんだ。


もし、玲那が、ネットとかで自分が罵られてるのを苦にして自殺でもしていたら、僕はあの子を攻撃した奴らを許さない。『復讐する権利』を認めてもらえるのなら、一人一人家にまで押し入って殺していってやりたいとさえ考えると思う。それが百人でも、千人でも、万人でも関係ないよ。あの子を罵って死に追いやった奴らには、その命でもって購ってもらいたいって考える。その時に、泣いて命乞いしようが弁解しようが、たぶん僕は許せない。


だけど、そんな僕の復讐心も認めちゃいけないと思うんだよ。『復讐する権利』を認めちゃいけないと思うんだ。


だから僕は、結人くんに対してもそれを認めたくない。彼が大人に復讐しようとするのを認めようとは思わない。もちろん、彼にだけじゃなくて、沙奈子に対してもそうだけどね。沙奈子がもし、虐待した相手に復讐を考えても、それは認めたくない。無論、法律の範囲内で訴えたりするだけなら、それについては止めようもないとは思うけど、包丁で切り付けたりとか、相手が自殺するまで追い詰めようとか、そういうのは許さない。させない。


それに、そうやって復讐しようとする際に、事情を知らずに止めに入った人まで巻き込むことだってありえるからね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ