表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
691/2601

六百九十一 結人編 「家族がそれで苦しむ」

五月二十三日。水曜日。今日は朝から雨だ。あまり強くはなくて降ったりやんだりって感じだけど。


あの『事件』で危ういところを波多野さんと結人ゆうとくんに救われた形になった女の子は、今はもうわりと平然として学校に通ってるらしい。どうやら事件のショックもそれほどじゃなかったようだ。むしろ、


『あの時助けてくれたお姉ちゃん、めっちゃカッコよかった!』


とか言い出してるらしいというのを、千早ちはやちゃんが情報として仕入れてくれたみたいだ。ただ、その時、その場に結人くんもいたことは気付いてなかったらしくて、彼のことは何も言ってないって。でも逆にその方が良かった気がする。そんな形で有名になるのは彼は望んでない気がするから。


だからこの件についてはもう大丈夫かなとも思った。波多野さんが訴えられるような気配もない。その後警察から連絡もない。接触もない。そのことについては、星谷ひかりたにさんも確認済みだって。


あまり深刻なことにならずに済んだのなら、それが何よりだ。


それよりも逆に、僕にとっては容疑者のことが気がかりだった。どうしてそんな事件を起こすまで放っておかれたのかが気になった。ニュースによると、以前にも似たような事件を起こして、その時は執行猶予付きの判決が出たらしい。しかも、その執行猶予期間が終わってなかったって。だから今回の件でその執行猶予が取り消され、刑務所に収監されることになると星谷さんが言ってた。さらには今回の件についても今度は実刑判決が出て、その分も刑務所にいることになるって。


執行猶予付きという点では玲那と同じだとしても、その後がまったく違いすぎる。


玲那は自分のしたことを心底反省して、もう二度と事件なんか起こさないって誓ってる。だから僕たちもそれを支えようと思ってる。なのに今回の事件の容疑者は懲りもせず似たような事件を起こしてしまった。


反省してなかったのか、それとも反省してても我慢できなかったのかは知らない。でも、反省してなかったのならちゃんと反省するように、我慢できなかったのなら我慢できるように周りの人が力になってあげれれればこんなことにならなかったのにな。って思ってしまうんだ。


僕は、玲那が二度と事件を起こさないように彼女を支えたいと思ってる。絵里奈も、沙奈子もそう思ってくれてる。星谷さんも、千早ちゃんも、大希ひろきくんも、イチコさんも、山仁やまひとさんも、波多野さんも、田上たのうえさんも、鷲崎さんもそう思ってくれてる。


そういう人が周りにいなかったのかな。だからこんな事件を起こしたのかな。これできっと、容疑者の家族も苦しめられるだろうな。


自分の家族がそれで苦しむっていうことを、どうして理解できないんだろう。


僕はそれが残念で仕方ないんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ