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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百八十八 結人編 「いい理解者に」

五月二十日。日曜日。寒さは少しマシになったけど、やっぱり肌寒い。聞くところによると昨日は三月下旬並みの寒さだったとか。あれでも三月下旬並みなのか。


今日も千早ちはやちゃんたちが来てお昼を作る。でも、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんは呼んでない。昨日も夕食には来てもらったし今日も来てもらう予定だけど、その時の印象からまだ様子を見てる状態なんだ。ようやく、週末の夕食を僕たちと一緒にっていうのだけは辛うじて『仕方ないから一緒に食べてやる』みたいに思えてもらってるらしいのは感じられるけど、それ以上となるとさすがに厳しそうだっていう印象もある。


だから無理はしない。今はとにかく、夕食を一緒にっていうことに完全に慣れてもらう段階だと思ってる。


まどろっこしいと思うかもしれない。面倒臭いことをと思うかもしれない。だけどこれが僕たちのやり方だ。一歩一歩、カタツムリが這うようにゆっくりとした動きで状況を確かめながらやるんだ。沙奈子の時と同じように。


あの頃は意図的にそうしてた訳じゃなくて何となくそうだったっていうだけででしかないけどさ。ただ、その時の経験は活かしたいと思う。


もっと手っ取り早くと思う人がいたとしても関係ない。これは僕たちの問題だから。こうして実際にすぐ傍で顔を見て仕草を見て息遣いを感じてるわけじゃない人の言うことを無条件に聞き入れることはできない。


だってそういう人たちは、何の責任も負ってくれないからね。言うだけ言って失敗したって責任は取らずに知らんぷりするだけだから。でも自分が考えて判断して決めたことなら、自分が責任を負うことだって納得できる。納得できないのならそれは、しっかり考えた上で判断してないからだと思う。


僕は沙奈子のために、絵里奈のために、玲那のためにきちんとしたいんだ。


そして結人くんは、今、僕達のことをどう捉えたらいいのか迷ってる最中なんだろうな。彼の中でその辺りが整理できるまでは、無理はしたくない。


なにしろ彼は、自分からは基本的に攻撃を仕掛けてこないから。相手から仕掛けられない限りは、目の前で何か犯罪行為でもしてない限りは噛み付いてこないから。慌てる必要も焦る必要もないよ。むしろ焦って強引に進めようとするとそれがストレスになって彼がもっと乱暴になる可能性だってあると思う。


僕がこんなことまで考えるようになるなんて自分でも驚きだけど、沙奈子と一緒に暮らした経験がもたらしてくれたものだからね。沙奈子のおかげなんだ。


結人くんは、沙奈子にとってとても重要な友達になるっていう予感があるんだ。僕が見た夢のこともそうだけど、それ以上に、この子のと似たような境遇を生き抜いた『仲間』みたいな形でいい理解者になってくれる可能性があると思うんだ。



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