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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百八十七 結人編 「大切な人のために」

五月十九日。土曜日。昨日はあんなに暑かったのに、今日は朝からやけに涼しい。肌寒いくらいに。こんなにコロコロ気温が上下するのは厳しいな。体調を崩さないように気を付けなきゃ。


みんな元気だから大丈夫とは思うけど。


という訳で、涼しいから敢えて鈴虫寺近くの喫茶店に行くことにする。機会があれば鷲崎わしざきさんにも一緒に行ってもらえたらいいな。今は遠慮してるみたいだけどね。


「それにしても、あの女の子が思ったよりも早く学校に来られるようになって良かったですね」


絵里奈がそう切り出す。例の事件の被害者の女の子のことだと思った。


「だよね。予想してたよりもショックが少なく済んだのかも」


玲那も胸を撫で下ろしながら言った。そうだよな。玲那にとっては他人事じゃない事件だし。


「うん。本当にそうだったらいいなと僕も思う。でも、もし無理をしてるんなら辛いとも思うんだ」


僕の言葉に、絵里奈が、


「そうですね。表向きは平気なふりをしてるっていうのはとても危ういと思います」


って。香保理かほりさんのことともそうだし、絵里奈自身がかつてそうだったことも思い出してるんだろうな。親の前では良い子のふりをしてた絵里奈自身の。


本当に、僕たちの周りにはいろんな事例の問題を抱えた人間が集まってる。だからそれぞれの事例からヒントを探すってことができるのが強みって気がする。


もちろんそれでも万能じゃないけど、すごく助かってるのも皮肉ではありつつ事実なんだ。


『三人寄らば文殊の知恵』とはよく言ったもので、それぞれの人生経験の中に思わぬヒントが転がってることがあるってことなんだろうな。そのためにも、自分のことを省みる必要があるっていう気がする。『自分は間違ったことなんて一つもしてない』って思い込んでたら、大事なヒントも見付けられないと思うんだ。


僕がこんな風に考えられるようになったのも、沙奈子と出逢って、それまでの僕のやり方だけじゃ上手くいかないこともあって、それでいろいろ考えるようになったからだっていうのもすごく感じる。


成長したとは思えないけど、変わったのは事実なんじゃないかな。


僕だって本質的には他人への共感性に欠ける、もしかしたら『サイコパス』って呼ばれる部類の人間なんじゃないかっていうのをすごく実感してしまうことも多い。沙奈子や絵里奈や玲那をはじめとした本当に身近な人たち以外の人がどんな目に遭ってもどうなってもたとえ命を落としても平然としてられるのが僕の本質なんだ。それをただ想像力で補ってるに過ぎないんじゃないかって。


そう。僕だって立派な『犯罪者予備軍』の一人だと思う。だけど実際にそうなってしまわないようにいろいろ考えるんだ。僕にとっては数少ない、『大切な人のために』ね。



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