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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百八十三 結人編 「誰か傍にいる人が」

五月十五日。火曜日。空が明るくて日差しはしっかり降り注いでた。でも肌寒いなあ。


昨日の緊急保護者会では、事件のあまり詳細までは語られなかったけど、五年生の女子児童が家に入ろうとした時に不審者が侵入しようとした事案とは伝えられた。あとはそれぞれ察してくださいということなんだろう。


さすがにその場がざわついて、しばらく収まらなかった。ただ、玄関までは侵入されたもののそれに気付いた近所の人の通報で警察が駆け付け事なきを得たということで、動揺も最低限に抑えられたみたいだ。


それにしても、この辺りでここまでの事件が起きるなんて……。


もっとも、以前から不審者や痴漢の類は何度かあったらしい。まあ、その<不審者>の一人として千早ちはやちゃんの前に現れた星谷ひかりたにさんが含まれてたことはもはや笑い話だけどね。


まあそれは置いといて、とにかく不審者や痴漢の類はいるということで、だから子供達を守るためにPTAも協力して交通当番をしたり『見守り隊』に協力したり、夜間パトロールをしたりっていうのを続けてるんだ。


そこまでやってもこういう事件が起こるんだから、僕はそれが悲しいとさえ思った。


今回のことで、容疑者本人だけじゃなく、容疑者の家族も世間から攻撃される。実際、もうすでに容疑者の個人情報だけじゃなく家族の個人情報さえ晒されてるっていう話を後から星谷さんから聞かされた。玲那の時にも起こったことが、また繰り返されてるんだ。


保護者会そのものは、『被害児童のケアを学校として全力で行います』『その他の児童でもし気分が悪い、体調不良を訴える子がいたら申し出てください』『皆さん各自、用心してください』といった、当たり前と言えば当たり前の形で締めくくられ、大きな混乱もなく終わった。


「私たちも気を付けないといけませんね」


帰り道、山仁やまひとさんが言ったのを、僕も星谷さんも「はい」と頷いていた。


沙奈子を連れてアパートに帰ると、玲那が、


「ホントに、どうしてそんなことするんだろ……」


と、悲しそうな顔で言った。怒るのを通り越して悲しいんだと分かった。


「本当……。自分の家族を苦しめるだけなのに……」


絵里奈も辛そうだった。


沙奈子も少し強張った顔をしてる気がする。その頭をそっと撫でてあげると、少しだけ安心したような顔になった。それから今日は少し遅めのお風呂に入って、髪を乾かす間、沙奈子は次の人形の服のアイデアを考えているのか、要らないプリントの裏に絵を描いていた。


波多野さんや結人ゆうとくにんついては心配要らないかもしれない。だけど被害に遭った女の子のことは、どうしても気になってしまう。


学校からカウンセラーが派遣されるとはいっても、それだけじゃなく、誰か傍にいる人がちゃんと支えてあげられたらいいんだけど……。



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