表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
682/2601

六百八十二 結人編 「良かった良かったでは」

五月十四日。月曜日。昨日の雨はすっかりやんでたけど、何気に肌寒い。


金曜日の<事件>については、連日、ニュースで流された。当然のように、今日の午後七時から沙奈子の学校でも保護者会が行われるそうだ。僕もそれに参加するつもりだ。その間、沙奈子には、山仁やまひとさんの家で待っててもらうことになる。


保護者会には、千早ちはやちゃんの保護者代理として星谷ひかりたにさんも参加するらしい。


「よろしくお願いします」


ビデオ通話の画面の向こうで絵里奈がそう言って頭を下げた。


「ああ」


と僕も頷く。


正直、昨日までは波多野さんと結人ゆうとくんのことが気になってて少し意識の外に追いやってしまってたというのは否めないけど、こうして見ると起こった事件そのものは大変なことだったっていうのが改めて実感されてきた。変な話、僕たちはある意味では<事件慣れ>してしまっているのかもしれない。今回の事件で女の子が無事だったからそれで良かったと感じてしまってたというのも否定できない。


冷静に考えてみれば間違いなく大変な事件なんだ。無事だったのはたまたまで、波多野さんが通りかかってなかったらと思うとゾッとする。それでなくても、被害に遭った女の子には、これだけでも一生心に残る傷になった可能性もある。「良かった良かった」では済まされない。


「お父さん……」


ビデオ通話の画面の向こうから、玲那も何とも言えない表情で僕を見詰めてる。『学校で保護者会が開かれる』っていう話を聞いて、彼女も改めて大変な事件なんだと実感したみたいだ。


「……」


沙奈子も、どこか不安そうな顔で僕を見上げてた。


「大丈夫。沙奈子は僕たちが守るよ」


そう言いながら彼女の頭をそっと撫でた。




仕事を終えて、まずは山仁さんの家に行く。


「おかえり~!」


いつものように大希ひろきくんと千早ちゃんが笑顔で迎えてくれる。沙奈子も、僕には分かる笑顔で迎えてくれた。


二階へ上がって、みんなと顔を合わせる。みんなも、改めて事件の重大性を感じてるみたいで、神妙な顔つきになってた気がする。


「私が探偵に依頼して集めた情報によりますと、被害に遭った女の子は本日、学校を休んだそうです。当然のことと思いますが、場合によっては今週一週間は休むことになるかもしれないようですね」


星谷さんが説明してくれる。どうやら、女性の探偵を、近所の主婦の会話に紛れ込ませてそこから情報を集めたらしい。相変わらずだな。


「PTSDなどの発症も十分に想定される事態ですので、被害者の女の子の情報についてはこれからも注視し、家庭での対処が難しいようであれば私の方から専門家にアプローチを掛けさせていただくことも視野に入れています。現時点では学校側からカウンセラーが派遣されるようですが」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ