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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百八十 結人編 「慎重に進めないとね」

五月十二日。土曜日。寒さはまたマシになっていてる気がする。


昨日の『事件』については、テレビのニュースでもやってた。容疑者については『近隣の住人の手で抑えられて』ってことで、波多野さんとか結人ゆうとくんのことについては詳しくは出てこなかったからホッとした。警察の方も、波多野さんや結人くんのことについては触れない方向でいくらしい。


ただこれももちろん、容疑者側が波多野さんのしたことについて暴行ってことで逆に刑事告訴したりってことも有り得ないわけじゃないから、油断はできない。警察としてはそんなつもりはないと、星谷ひかりたにさんは確認してくれてたけど。


「ごめん。迷惑かけるかもしれない…」


最初は「てへぺろ♡」って感じで言ってた波多野さんも、本当は申し訳ないと思ってたんだって。分かってても、『事件』を目の前にしてしまうと頭の中がカーッとなってしまって気が付いたら容疑者に襲い掛かってしまってたらしい。


今回の事件はそれこそ『痴漢』どころか『住居侵入』『強姦未遂』ってことでれっきとした凶悪事件だから、波多野さんのおかげでそれが未然に防がれたって点を大事にしたいとも思いつつ、万が一のことを思ったらやっぱり諸手を上げて『よくやった!』とは言えないってことも忘れちゃいけない気がする。


もし犯人がナイフとか持ってて反撃されてってなったら、波多野さんはここにいなかったかもしれないんだ。それじゃ意味がない。被害者も助けて、自分も無事でなきゃ、駄目なんだ。


「ほんっとお願い。心配させないで!」


田上たのうえさんが言うのも当然だと思う。


波多野さんのそういう部分についても、対処していかないといけないだろうな。そのためには、お兄さんの『事件』が決着つかないといけないのかもしれない。


ただ、お兄さんの方は徹底的に争う姿勢なんだって。この期に及んでもなお、被害者も家族も苦しめるつもりなのか……。


そんなことをしてたらますます自分が惨めになるだけだって分からないのかな。まあ、分からないからできるのかもしれないけど。


田上さんの家族も相変わらずらしい。


でも、だからこそ、結人くんについては、改められる可能性があるのならそうなってほしいと思う。


本人は迷惑がってる様子もありつつ、少なくとも逃げ出そうとはしてない。波多野さんのお兄さんや、田上さんの家族とは違ってる。そちらは、関わろうとすると逃げるんだ。そうされるともう、手出しもできない。


結人くんについても、あまりしつこくしようとすると逃げ出してしまうかもしれない。そうならないように距離感を計りつつ、慎重に進めないとね。


こういうこともあって、沙奈子の誕生日のお祝いは、あまり派手にはやらないようにした。


「沙奈子ちゃん、十二歳の誕生日、おめでとう」と絵里奈と玲那が声を合わせ、


「沙奈子、おめでとう」と僕も穏やかに言い、


鈴虫寺近くの喫茶店で、慎ましやかに小さなケーキで、僕たち家族だけでお祝いしたんだ。


今度のことがどうなるか分からないから、星谷ひかりたにさんと千早ちはやちゃんの誕生日のお祝いの時に、一緒にということになったのだった。



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