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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十七 結人編 「年上だけどね」

五月七日。月曜日。ゴールデンウイークも終わり、いつもの日常が戻ってくる。でも、朝から結構な雨だった。


雨そのものは嫌いじゃないけど、正直、沙奈子の左腕の怪我の件とか、あの時もすごい雨だったから、あまりいい思い出が無かったりもする。


でもそんなことを気にしてても始まらないので、さて、がんばらなくちゃ。沙奈子だって淡々と毎日を送ってくれてるし。


六年生になって約一ヶ月。鷲崎わしざきさんによると、集団登校の時の沙奈子のリーダーぶりも板についてきたらしい。


一方、結人ゆうとくんについては目立った変化はないって。だけどそれは当たり前だと僕は思ってる。沙奈子だって最初の一ヶ月は部屋の隅に膝を抱えて座ってるだけって感じだったし。


それに僕が受けた印象だと、彼が『変わったな』っていう風に思えるようになるまでは沙奈子以上に時間がかかるんじゃないかって気がしてる。


だから焦らないんだ。今はただ、朝の集団登校で大人しくしてるっていうのが確認できただけでも十分だ。


ふと思い出す。


以前、僕の夢の中に出てきた『鮫島結人』のことを。


あの頃は、もし、沙奈子の友達としてそういう子が現れたりしたらどうしようと不安にもなってしまったけど、現に『鯨井結人くじらいゆうと』くんが現れた今は、あの時みたいに不安じゃなかった。いくらかの心配はもちろんあっても、決してうろたえるような感じじゃない。僕自身がもう、あの頃の僕とは違うから。




五月八日。火曜日。雨はやんだけど、何だか涼しい。肌寒いと言ってもいいくらいかもしれない。


朝、出社の為に沙奈子と『いってらっしゃいのキス』『いってきますのキス』を交わしてる時、外で「おはようございます!」っていう声が聞こえた。鷲崎さんの声だってすぐに分かった。いつものように僕を見送るために表に出てた時に、誰かと顔を合わせたんだろうな。なんとなく、アパートの誰かって気がした。


それですぐに頭に浮かんだのが、十号室の喜緑きみどりさんだった。夜間パトロールの時に鷲崎さんに手を握られたりして、明らかに意識してる感じだったのが何だか微笑ましかった。


今、このアパートに住んでる人達はみんな、不器用だけど要領はよくないけどやり方は変だったりもするけど、決して悪い人達じゃない。と思う。カメラを仕掛けたという佐久瀬さくらいさんだって、今は木咲きざきさんと付き合ってて上手くいってるらしいし。カメラを仕掛けてしまったことも反省してくれてるって玲那も言ってた。


もし、鷲崎さんと仲良くなってくれたら、それは喜ばしいことなんじゃないかとも思うんだ。


ちょっと鷲崎さんの方が年上だけどね。


八歳くらい。



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