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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十六 結人編 「甘やかすべきだとは」

という訳で結局、夜間パトロールには、僕と沙奈子と鷲崎わしざきさんと喜緑きみどりさんで参加することに安った。


集合場所に集まると、『見守り隊』のジャケットを着た人達や、消防団の制服を着た人、さらには警察官までいて、僕たちを除いても全部で二十人くらいの人達で、思った以上に本格的な活動なんだっていうのが実感だった。


「お~、なんかワクワクする~」


鷲崎さんが少し興奮した感じで言ってた。対する喜緑さんは緊張してるのかすごく静かだ。だけど、何となく鷲崎さんのことを意識してるのか、何度も彼女のことをちらちら見てるのが分かった。


その後、五つの班に分かれてそれぞれの地域を回り、僕たちは、アパートの近所を通る班に加わることになった。


「拍子木、打ってみるかい?」


『見守り隊』の高齢者の人にそう言われて、沙奈子が少し戸惑いながら拍子木を打つことになった。でもこれってしっかり音を出そうとすると割と手が痺れるみたいなんだよね。


「沙奈子ちゃん、代わってあげる」


途中で、沙奈子が手を気にするような素振りを見せ始めた時、鷲崎さんがそう言って代わってくれた。


こうして夜間パトロールは、特に何か起こるでもなく、三十分ほどで平穏に滞りなく終わり、「お疲れ様でした」と『見守り隊』の人に見送られながら僕たちはアパートへ帰った。


「楽しかったですね」


アパートに戻ると、鷲崎さんがニコニコしながら言った。しかも、


「私、これからもちょくちょく参加します」


って。するとそれまで黙ってた喜緑さんまで、


「じゃあ、僕も一緒に」


と、遠慮がちながら言ってくれたのだった。




五月六日。日曜日。


いつものように千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと星谷ひかりたにさんが来て沙奈子と一緒にお昼を作ったけど、今日は鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんは誘わなかった。


先週、連日呼んだ時の様子がちょっときつそうだったから、しばらくまた様子を見ようということで。夕食に僕たちだけなのはもう慣れたみたいだけど、この三人まで一緒というのはさすがに疲れるみたいだ。


そこで今日は、普通に六人で昼食にした。


鯨井くじらいめ、案外ヘタレだな」


千早ちゃんはそう言うけど、それが彼を馬鹿にしてる訳じゃないのは僕たちには分かってる。ただ、本人の前で言うのはあんまりいいとは思えないかな。だけど千早ちゃんもそれは分かってるみたいだ。僕たちが相手だからこそ通じる冗談っていうことが。


三人が帰って昼過ぎから降り出した雨は、夕方にはけっこうな本降りになってた。


ところで、結人くんが今の学校に転校してくるきっかけになった件のことで、家庭裁判所で事情を聞かれることになるらしい。家庭裁判所としては、宿角健侍すくすみけんじくんだけを一方的に悪いということにして判断することはできないってことなんだろうな。


その辺のことは、玲那の事件の時にも散々見てきたことだから、僕としては別に何とも思わない。きちんと調べた上で判断してもらえるなら、それでいいと思う。それで結人くんが何かの責任を負うことになるとしても(実際にはまだ十一歳の時のことだから責任という形は問われないとしても)、それはそれで受け止めるべきことだと思ってる。


僕は決して、彼を甘やかすべきだとは思ってない。彼の生い立ちそのものは考慮するとしても、だからと言って何をしてもいい訳じゃないからね。



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