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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十五 結人編 「夜間パトロール」

夕食。最近はずっとそうしてたように鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんを招いて一緒に食べてた時に、彼女が突然言った。


「先輩!、夜間パトロールに行きませんか?」


夜間パトロールっていうのは、地域の有志と消防団とPTAが合同で毎日行ってる、防犯を目的とした見回りのことだった。拍子木を打ち鳴らしながら歩く、『火の用~心!』っていうあれも兼ねたものだった。


基本的にはPTAからは委員の人が参加するんだけど、自主的に参加する分には委員じゃなくてもOKなんだって。


「私、こういうのやってみたかったんです。でもこれまでの学校では、PTAからの参加はなくて。だけど、朝に沙奈子ちゃんたちの集団登校を見守ってたら『見守り隊』の人に「どうですか?」って言ってもらえて、『是非!』って思ったんです」


だって。


そういうところ積極的なんだなあ。僕もその話は聞いてたけど、夜は沙奈子と一緒にゆっくりしたいかなっていうのが正直あって、これまでは参加したことがなかった。だけど。


「どうする?。沙奈子もやってみる?。夜間パトロール」


って聞いたら、「うん」って躊躇うことなく頷いてくれた。


となれば断る理由もなかった。たまには人形の服作りを休んでもいいと思ったし。


「じゃあ、行きましょう」


ってことで。


でもやっぱり、


結人ゆうとは行かないそうです…」


アパートの前で待ち合せると、鷲崎さんが残念そうにそう言った。けどまあ、それは想定済みだから。


とその時、


「あの…、それ、僕も一緒に行ったら駄目でしょうか……?」


って、おずおずとした感じの申し訳なさそうな声が掛けられた。


思わず声の方にふり返ったらそこには、すごく恐縮した様子の若い男の人が。


「…え、と、十号室の喜緑きみどり…さんだっけ?」


僕の記憶の中にあったものを何とか引っ張り出して尋ねる。するとその男の人も、


「はい、喜緑徳真きみどりとくまです。玲那さんにはいつもお世話になってます…」


なんて、おどおどした様子で応えてくれた。


そう、彼は、このアパートの住人の一人で『沙奈子のファン』で『玲那のオタク友達』の喜緑さんだった。


僕たちとはたまにアパートの前で顔を合わせると挨拶を交わすくらいでほとんど話もしたことなかったんだけど、どうしたんだろう?。


「あ…あの、僕もホントは防犯の活動とか興味はあったんですけど、今までは勇気が出なくて…。でも今日は山下さんと沙奈子ちゃんもだって言うから……」


と、なんとか絞り出す感じで喜緑さんが言うと、


「それはちょうどよかったです!。私も一緒に行きますから、がんばりましょう!」


って鷲崎さんが、喜緑さんの手を掴んで言ったのだった。



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