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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十三 結人編 「正当な報酬」

五月四日。金曜日。ゴールデンウイーク後半二日目。


昨日は、星谷ひかりたにさんたちがあの旅館に一泊しに行ってたから、山仁やまひとさんのところに集まることもなかった。今日の夕方には帰ってくるそうだから、その時には集まることになる。


でもそれまでは何もすることがない、沙奈子と玲那と僕の三人だけの時間だ。もっとも、お昼は沙奈子が作ったものを鷲崎わしざきさんのところに届けたりする予定だし、四時頃には絵里奈も仕事から帰ってくるけどね。


絵里奈も休みになればいいんだけど、ゴールデンウイーク中は観光客も多くてお土産に漬物を買っていく人も多く、書き入れ時なんだって。それにも拘らずちゃんと明日の土曜日はいつも通りに休みを貰えるんだから、それだけでもありがたいのか。


四人で朝食にして、絵里奈を見送って、沙奈子と一緒に掃除と洗濯をして、午前の勉強をして、人形の服作りをして、玲那はフリマサイトに出品した品物の管理作業をして。


こちらは本当に順調で、何も言うことがない。


その一方で、鷲崎さんを通じて注文を受けた人形用のドレスが完成、お昼に昼食と一緒に届けることになった。すると。


「うわ~!、うわ~!。なにこれすごい!!」


沙奈子の作ったドレスの出来に、鷲崎さんは目を丸くして驚くしかできない感じだった。


「このクオリティ!。このディティール!。いや、これ、ちゃんとした一般に流通してるものとなんにも劣るところないと思いますよ!?。ホントこれ普通に売ってないのがおかしいですって!」


結人ゆうとくんが出掛けてていないから余計に遠慮なく、鷲崎さんは絶賛してくれた。


「マジで私も一つ、イラスト用の資料としてお願いしようかなあ……。


うおっ!、ここってこんな風になってるんだ!?」


とか、ドレスを隅々まで見ながらそんな風に声を上げて、それから思い出したように、


「おっと、忘れるところだった。これ、ドレスの代金、預かってました!」


と、封筒に入った一万円を渡してくれた。これはあくまで、ちゃんと発注を受けてそれに応えて作ったものだから、そのお金は受け取るべきものとして、遠慮なく受け取ることにした。沙奈子自身の手で。


自分の作ったものに対する正当な対価として支払われたそれに、沙奈子も神妙な顔つきになって、少し戸惑った様子も見せながら、僕を見た。


「大丈夫。それは沙奈子自身のものだよ。むしろ正当な報酬として受け取らなきゃダメだ」


僕がそう言うと、彼女は「うん…」と小さく頷いて、大事そうに胸に抱えたのだった。



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