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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十二 結人編 「目を逸らしてちゃ」

五月三日。木曜日。ゴールデンウイーク後半初日。昨日の昼頃から降り出した雨もすっかりやみ、良い感じの陽気になった。


今日と明日、星谷ひかりたにさんは、大希ひろきくん、千早ちはやちゃん、イチコさん、波多野さん、田上たのうえさんを連れてあの旅館に泊まりに行くらしい。もうすっかり恒例になったイベントだ。


まだ大希くんと一緒にお風呂に入ったりするとのぼせそうになったりっていうのは収まらないそうだけど、まあそれもゆっくり慣らしていけばいいんじゃないかな。


と言うか、六年生だよね?。大希くん。それで同級生の女の子や高校生の女の子と一緒にお風呂に入ってまるで動じないっていうのが、なんだかすごいなってしみじみ思う。


その一方、僕たちの方は、さすがに結人ゆうとくんの負担も考えて今日のところはのんびりとそれぞれ過ごすことにした。


でも、お昼は沙奈子と一緒に餃子を作って、鷲崎わしざきさんのところに届ける。


「あう~、ありがとうございますぅ~!」


鷲崎さんが泣きそうな顔でお礼を言ってくれて、僕は少し気恥ずかしいくらいだった。


もちろん結人くんは顔も出してくれない。だけどそれは別に構わない。自分の思い通りにならないことに苛立っちゃいけない。自分の思い通りにならないからといって苛々する大人の姿を子供に見せちゃいけないと僕は自分に言い聞かせる。そういうのを子供は真似するんだ。他人が自分の思い通りにならないことに苛立って勝手にストレスを感じて誰かに当たったりするんだ。


僕がこの二年間に経験したことを、僕自身や僕の周りで起こっていたことに当てはめてみて得た実感だった。実際に沙奈子をこれまで育ててきて、僕自身が学んだことだった。


結人くんが乱暴なのは、彼の周りの大人の振る舞いから学んだものだと思う。だからこれからは、そうじゃない大人の振る舞いを学んでいってもらうべきだと思うんだ。鷲崎さんはずっとそうしてきたはずだ。彼女自身が意識してたかどうかは分からないけど。でも、彼女の朗らかで意図して他人を傷付けようとしない在り方は、結人くんに対して少なくない影響を与えてきた気がする。彼が辛うじてバランスを保ってられるのは、鷲崎さんのおかげなんじゃないかな。


物事にはなんだって原因がある。原因があるから結果がある。子供が問題を起こすのも、必ず原因があるはずなんだ。大人がそれに向き合わないで、子供がその原因に向き合えるような人になるとは思えない。


誰だって『自分が悪い』『自分に問題の原因がある』とは思いたくないかもしれない。だけどそうやって目を逸らしてちゃ問題は拗れるだけだっていうのを僕は学んだ気がするんだ。



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