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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百七十一 結人編 「不幸の種がばら撒かれるのは」

五月二日。水曜日。ゴールデンウイーク中の平日二日目。


今日も沙奈子はいつもと変わらずに学校へと向かう。この子にとって学校はあくまで日常の一部であって、苦痛じゃないんだ。この子たちにそういう環境を提供できてることを、僕は大人の一人として誇らしく思う。


できれば僕ももっとPTAとして積極的に学校に協力したかった。そんな風に思えるくらい、この子たちが通う学校はしっかりやってくれてるっていう実感がある。


今はまだ、そうじゃない学校も少なくないのかもしれない。だけどこれが広がっていけば、救われる子たちも増えるんじゃないかな。イジメがゼロ件になることはないとしても、それを理由に自ら命を絶ったり、イジメっ子と言われる子たちに復讐しようとして取り返しのつかないことになるのも減ってくれることを僕は望みたい。


簡単じゃないことは分かってる。ただの理想論と笑われるだろうことも分かってる。だけど人間は、『そんなこと無理だ』と多くの人から笑われるようなことを実現してきたっていうのも事実だと思うんだ。


なんて、こんなことを考えること自体、二年前までの僕なら有り得ないことだった。その有り得ないとが起こってるんだから、それ以外の『有り得ないこと』が現実になったって不思議じゃない気がする。


笑いたいんなら笑えばいい。でも、そのために努力してる人は確かにいる。沙奈子の通う学校は、そのために努力してくれてる。


『イジメられてるかも』と申し出れば、ちゃんと対処してくれる。


『危険な子かも』と思えば、きちんと油断せずに見守って、指導してくれる。


基本的に体罰もないし、生徒を怒鳴りつけて威圧する教師もいないのに、みんな授業をちゃんと受けてる。


もちろん、品行方正で礼儀正しい『良い子』ばかりじゃないっていうのも事実だ。それは分かってる。でも、だからってそれを『仕方ない』と言ってそのままにしないっていうのも確かなんだ。


それを実現するために努力してる人がいるのがちゃんと見えるのって、本当にすごいな。


だから僕も、沙奈子が誰かを傷付けたりイジメたりせずにいられないような状態にはしない。それこそが一番の『学校への協力』なのかもしれないって気がする。


そしてそれは、結人ゆうとくんのこともそうなんだ。学校内でのことは学校が対処してくれるけど、それに任せきりにするんじゃなくて、彼の周りの大人である僕たちが、彼に、『誰かを敵視したり攻撃しなくても生きられる世界もあるんだ』ってことを知ってもらう努力をしなきゃいけないと思うんだ。


これは決して、『綺麗事』じゃない。僕たちの周りで不幸の種がばら撒かれるのは困るっていう、僕自身の個人的な要望なんだ。



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