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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百五十八 織姫編 「大人の側の責任」

「おはようございます。ごめんなさい、結人ゆうとが相変わらずで」


ぱたぱたと慌てた感じで鷲崎さんが二階から下りてきて僕に向かって申し訳なさそうに何度も頭を下げた。そんな様子をちらり窺うようにと結人くんが見たのが分かった。僕が鷲崎さんにどういう態度をとるのかを気にしてるんだろうな。


だけど僕は、そういうのとはまったく関係なく冷たい態度とかつっけんどんな態度とか取るつもりはまったくない。沙奈子の前でそんな姿を見せたいとは思わない。


「いえいえ、大丈夫ですよ」


僕は穏やかな気持ちでそう言えた。僕と鷲崎さんがそんなやり取りをしてる間にも全員が揃ったらしく、沙奈子たちが歩き出した。


「いってらっしゃい」


「気を付けてね」


僕と鷲崎さんがそう声を掛けながら見送る。


正直、沙奈子や結人くんだけじゃなく他の子たちもそんなに愛想がいい訳じゃない。だけど、やっぱり、近所の顔見知りによる子供が被害者になる事件が後を絶たない状況じゃ、馴れ馴れしくできなくても当然だっていう気しかしないんだよね。


だから僕は、子供たちが誰にでも愛想良くできないのは、それができる環境を作ってあげられてない大人の側の責任だと思ってる。


玲那が事件を起こしてしまったのも、あの子の実の両親の悪行を放置してきた周りの人間の怠慢がそれを招いてしまったという一面もあると思うんだ。そういう予兆があったのにそれを見ないふりをしてきた身近な人間の。


僕は、他人のそういうのまでは面倒見きれなくても、少なくとも僕の家族、すぐ身近な人のそういったものを見ないふりして放っておくことはしたくないと思う。ちゃんと見守って、場合によっては警察の力を借りたりすることも躊躇わないようにしなくちゃと思ってる。取り返しのつかないことになるくらいなら、その前にきちんと罪を罪として裁かれることも必要だと思うんだ。


取り返しがつかなくなった事例をいくつも見てきただけにね。


結局、どっちを選ぶかだよ。


面倒を嫌って細かい罪を見逃して取り返しのつかないことになるまで放っておくか、細かい罪の段階で手間と時間をかけてでも対処してその先の大きな厄介事を未然に防ぐか。


僕は後者を選びたい。


山仁やまひとさんのお父さんの事件にしたって、そこに至るまでにもいくつもの事件が起こってたらしい。だけど周りの人間はそれが表沙汰になって自分たちの名誉が傷付くことを厭って目を瞑って、結果的に大変な事件を招いてしまった。


玲那の事件でも、彼女の親戚は薄々、実の両親があの子にどんな仕打ちをしてるか気付いていたのにそれを放っておいて結局は全て明るみに出た。


あの子に酷いことをした<客>たちも、今ではもう法律上の罪に問うことはできないけど、そういうことをしてたというのがバレて仕事や家庭を失う者が出始めたと、星谷ひかりたにさんが雇った探偵の調査で分かってきたんだよね。



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