六百五十五 織姫編 「様子が変わってきてる」
四月十八日。水曜日。
今週金曜日に、沙奈子の学校で授業参観と懇談会がある。その時に、PTAの委員の選出もあるそうだ。だけど僕は、申し訳ないけどそれを免除してもらえるように申請しておいた。それが認められるかどうかはまだ分からないけど、去年も認められたから今年も認めてもらえたらなと思ってる。
『せめて四人で一緒に暮らせてたらな……
そうすれば僕と絵里奈とで交代でやってもよかったんだけど……』
こういうところでも、影響が出てくるなあ。
懇談会には出席するために、有給は取っておいたけどね。前回の参観は絵里奈に仕事を休んでもらったからさ。もちろん、上司はいい顔しなかったけど、有給はどのみち消化しないといけないものだから渋々許可してくれた感じかな。
まあそれはいいとして、昨夜も沙奈子に結人くんの学校での様子を尋ねてみた。でも、答えはやっぱり『普通』。沙奈子の言うそれは『大きなトラブルはなかった』っていう意味だから十分安心できた。念の為に山仁さんのところでも星谷さんから、千早ちゃんや大希くんからの情報として上がってきたことも聞いたけどね。そちらでも、目立ったトラブルはないそうだ。
だからか、鷲崎さんの機嫌もいい。それが何よりだ。
「ここだけの話、今の学校に移ってから結人の様子が変わってきてるんです…」
夜、ビデオ通話で、結人くんがお風呂に入ってる間にこっそりとそんなことを言ってきた。
「最初はちょっとイライラしてるのかなとも思ったんですけど、でもまあそれは新しい環境に戸惑ってるからっていうのもあるかと思ってそんなに気にしてなかったんですけど、今までみたいに学校で他の子に絡まれた時のイライラとは違うかなっていうのはすぐに分かったんです。
で、次に感じたのが、マジで今の学校の雰囲気に戸惑ってるんじゃないかってことです。それも、転校したばっかりだからとかそういうのじゃなくて、ホントに今までと違ってるからってことで。
今度の金曜日、先輩も授業参観と懇談会に出るんですよね?。私も行きますから、その時にまた雰囲気みたいなの私も探りたいと思ってます」
だって。
僕も正直、始めて授業参観に行った時には自分がイメージしてたのとかなり違ってる気がして戸惑った。僕がいたクラスは、学級崩壊とまでは行ってなかったかもだけどかなり騒々しくてあまり熱心に授業を受けてない子の方が多かったような覚えがあったのに、沙奈子のクラスは全然そんなことなかった。もちろん騒々しくしてる時もあるけど、担任の先生が「ちゅうも~く!」とか言ったらすぐに静かになってたな。




