六百五十四 織姫編 「学校であったこと」
四月十七日。火曜日。今日はまた昼過ぎくらいから雨が降り出した。
昨夜も寝る前、沙奈子に結人くんの様子を沙奈子に聞いてみた。で、帰ってきた答えは『普通』。
実はもう少し詳しい様子についても千早ちゃんや大希くんから星谷さんに伝えられてて、会合の時に話してもらえてたんだけどね。
それによると、どうやら、一部の女の子たちの間で結人くんの人気がすごく上がってるらしい。何でも、「クールな強キャラ」っていう評価があるんだとか。正直、僕にはピンとこない話だったけど、沙奈子たちの学校にはあまりいないタイプだっていうことで、何故か人気になってしまったらしかった。
なんでも、『ファンクラブ』的なものまでできつつあるとか。
う~ん……。
正直僕にとっては理解に苦しむ話だけど、まあ、結人くんが受け入れられてるっていう意味では歓迎するべき動き…、かな?
ただ、彼自身はそういうのを迷惑がってるっていう様子もあるんだって。
千早ちゃんが言ってたそうだ。
「いや~、女子の一部からはもう結構、熱烈な支持を受けてるらしくってさ。でも鯨井自身としてはそれがうっとうしい的なことも言ってるのに、それがまた『カッコいい~♡』ってな感じでウケてるっぽいよ。謎だよね。私はぜんぜん好みじゃないけど」
とか何とか。
千早ちゃんもお母さんやお姉さんからの暴力に曝されてきた経験があるからね。もう今さら暴力的な雰囲気を漂わせるタイプはうんざりってことなのかもしれない。
それでも、別に彼に対して噛み付いたりするわけじゃないから、取り敢えずトラブルにもなってなかった。このことは本当に幸いだと思う。もしかしたら以前の千早ちゃんだったら、彼に反発して対立してた可能性もありそうだ。
「そんなことになってるんですね…」
夜、部屋はすぐ近くだけど結人くんがあまり僕たちの部屋に来ることを望んでないことと、彼を一人にするのはあまり好ましくないということで、鷲崎さんは自分の部屋からビデオ通話で参加して、話をしてた。
「それにしてもあの結人をカッコいいとかいう女の子がいるってのがびっくりですよ。前の学校ではそんな話聞いたこともありませんでした。もっとも、結人が学校であったこととか話してくれなかったってのもありますけど」
確かに彼はそういう話とかしなさそうだなとは思ってしまった。
でも、子供とそういう話ができないというのは残念なことだし、ある意味では危険なことだっていう実感が今の僕にはあった。四年生の時にもし、千早ちゃんとのことを沙奈子が話してくれてなかったらどうなっていたかっていうのがあるからね。




