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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百五十三 織姫編 「僕も少しは」

四月十六日。月曜日。今日からまた一週間が始まる。


昨日はあれからまた鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんを招待して夕食にした。


鷲崎さんの方は相変わらずすごく喜んでくれてたけど、結人くんの方も相変わらずでただ黙々と食べるだけだった。


でも、その食べっぷりが明らかに美味しいからって感じで、むしろ微笑ましささえ感じた。彼がいくら不機嫌そうに振る舞ってても、食べ方で本音が透けて見える感じかな。


だから僕は彼に対しては何も心配してない。もちろん何一つやらかさないっていう意味で信用してるんじゃない。あくまで彼がどんなに危険だとしても、本質の部分では沙奈子に近いんだろうなっていうのを感じるっていうことだ。


心の底から他人と諍いを起こしたいわけじゃないっていうことかな。


彼の危険さは結局は周りの人間次第ってだけだと思うんだ。


攻撃的に接すると彼も攻撃的になる。だけど、それをはぐらかすことができれば彼は意外と大人しい子なんじゃないかな。鷲崎さんと一緒にいられてるってことが何よりのその根拠だ。


彼女の朗らかさが、彼の危険な部分を上手くはぐらかして火が入るのを防いでる気がする。


沙奈子が僕と出逢ったように、彼も鷲崎さんと出逢ったんだ。それがきっと彼の人生を支えてくれる。鷲崎さんのことを大切だと思えるようになれば、彼はきっと自分の狂暴な部分を制御できるようになると思うんだ。


そしてそのために僕は鷲崎さんと再会した。


この再会を意味のあるものにするかどうかは、僕次第ってことかな。


以前の僕ならきっと関わり合いになりたくないと言って目を背けてたと思う。でも今の僕にはそれができない。僕には関係ないことだって目を瞑ることができない。これが他の誰かだったら知らないふりができたかもだけど、他ならない鷲崎さんだから、鷲崎さんが守ってる結人くんだから、僕も力になりたいと思えるんだ。


だけどそんな自分に苦笑いも浮かべてしまう。


『まったく、変われば変わるものだよ……』


ってさ。


『二年前の僕が今の僕を見たら、きっと馬鹿にするだろうな……』


そう思えるんだ。


でもそれが嫌じゃない。昔の僕には理解できない僕になってることが逆に誇らしい気もする。


『そうか…、沙奈子も成長してるけど、僕も少しはってことなのかな……』


人との出逢いが人を変えていくこともあるっていうのをつくづく実感するよ。




仕事を終えて沙奈子を迎えに行ってみんなと顔を合わせて、アパートに帰る。


「おかえりなさい!」


と鷲崎さんがまた出迎えてくれる。


それが何だかくすぐったくて、僕は頬が緩んでしまうのだった。



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