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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百五十一 織姫編 「オーダーメイド」

四月十四日。土曜日。今日もまた天気が悪い。でも雨が降ってるだけで風はほとんど吹いてなかった。だからバスに乗ってまたあの人形ギャラリーへと向かう。


もちろん沙奈子は今でも人形のドレスをどんどん作ってて、ますます技術的にメキメキと上達してるらしかった。もうほとんど市販品と区別がつかない。いや、部分的にはむしろ市販品より丁寧に縫製できてて、耐久性の点でも人間が実際に着てるものと大差ないレベルだっていう評判らしかった。


だから、すでに、『沙奈子のドレスのファン』もついてるって玲那が言ってた。


そしてこうやって絵里奈と玲那に会いに行く時には、出来上がった『作品』を持っていくんだ。


「沙奈子ちゃんのドレスを楽しみにしてる人がいるんだよ」


ギャラリーの喫茶スペースでいつものように絵里奈と沙奈子を待ってると、玲那がそう言ってきた。それがまた自分のことのように嬉しそうに笑顔で。


ああでも、実際、玲那にとっては嬉しいことなんだろうな。


「不思議だけど、沙奈子にはそういう才能があったっていう証拠なのか」


「そうそう、その通りだよ。お父さんが沙奈子ちゃんに裁縫道具を買ってあげたのは、まさに先見の明があったってことじゃないかな」


そこまで言われるとくすぐったくて苦笑いになってしまう。僕にそんなものがあったとか思えないから。


だけど、四人の時間を過ごして沙奈子と一緒にアパートに帰って、それから山仁やまひとさんの家に集まってまたアパートに帰って夕食にした時、鷲崎さんまで、


「沙奈子ちゃんのドレスは本当に可愛いですよ!。会社でも写真見せたら大反響でした!。しかも、うちの会社にもドール趣味の人がいるんですけど、その人、沙奈子ちゃんのドレスを買ってたんですよ!。


いやマジでこれはすごいです!。先輩が沙奈子ちゃんの才能を見付けたんですよ!」


とか興奮気味で言ってた。


って、鷲崎さんの会社に沙奈子のドレスを買った人がいたって…!?。


いやまあ、実際に買ってくれた人がいるっていうことはその人とどこかで繋がることもある可能性はもちろんあったんだろうけど、まさかこんなすぐにそういう人と繋がりができるとは思っていなかった。


「それで、私が沙奈子ちゃんの知り合いだって分かったら、『ぜひ直接注文したい!。オーダーメイドとかやってないか聞いてきて!』とか言われちゃって。


で、実際のところどうでしょう?。オーダーメイドとかってアリですか…?」


そんな鷲崎さんの問い掛けに、沙奈子はちょっと困ったように僕を見上げた。だから僕は言ったんだ。


「沙奈子の好きにすればいい。沙奈子のドレスが欲しいっていう人の為に、作ってあげたいと思うんなら」


僕の言葉を受けて、彼女はコクリと鷲崎さんに向けて頷いたのだった。



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