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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百四十三 織姫編 「申し訳なさそうに」

鯨井結人くじらいゆうとくんの様子はどうでしたか?」


千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと一緒に来た星谷ひかりたにさんが、昼食を作り始めた三人の様子を見ながらそう聞いてきた。


彼女も気になってるんだろうなって分かる。


「想像してたよりは大人しい子だと思います。もちろん愛想良かったり態度が良かったりってわけじゃないですけど、こっちが余計なことをしない限りは噛み付いたりもしてこないって感じました」


「そうですか。それは何よりです。お行儀良い子供というのは案外、扱いが難しいものだと私も実感しています。なにしろ、本人が内心では何を考えているのかが掴みにくい場合が多いですから。不平不満があるなら態度に示してもらえた方が対処もしやすいですね」


それは僕も実感してることだった。沙奈子は、僕たちにとってはまだ分かりやすい子だと思うけど、他人にはきっと分かりにくいと思う。すごく大人しくて真面目で、一見すると扱いやすいようには見えるかもしれなくても、実は激しい衝動も秘めてるんだ。そういうものが育ってしまわないようにしないといけないんだけど、大人しいからそういう部分には目を向けないでただ『大人しくていい子』っていう扱いになってしまって、注意を向けられなくなってしまう可能性がある気がする。


しかも、大人しいからっていいように利用しようとしてあれこれ押し付けたり、場合によってはストレスの捌け口にされたりってこともあるかもしれない。だけどそういうことをすると、彼女の中にある『激しい衝動』が育ってしまって、それがいつか爆発することだって有り得るんだ。僕は、そういうことがないように沙奈子を見守っていかないと駄目なんだ。


それを改めて実感していた。




四月二日。月曜日。


昨日も、予定してた通り、夕食に鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんを招待させてもらった。メニューは餃子だった。昼に、沙奈子と千早ちゃんと大希くんが具を作り、僕と星谷さんも手伝って作った餃子の残りを焼いたんだ。


それも結人くんは、ただ黙々と食べてくれた。美味しくなかったらあんな食べ方はしないと思う。だから「美味しい」とも「ありがとう」とも言ってくれなかったけど、ちゃんと美味しいと思ってくれてるのは伝わった気がした。


「ホントにもう、すいません。結人、ちゃんと『ありがとう』『ごちそうさま』って言わないと駄目だよ」


鷲崎さんがすごく申し訳なさそうに何度も頭を下げるのが、かえって申し訳なかった。


だけどさすがに二日目だから、昨日よりはゆっくりと彼女の様子も見られた気がする。


僕と沙奈子と、ビデオ通話の画面の向こうの絵里奈と玲那に囲まれて、彼女も少し安心してるように見えたんだ。



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