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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百四十二 織姫編 「衝動的で激しい部分」

四月一日。日曜日。昨日あれからすぐに、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんが来てくれた。さすがに結人くんはどこか不満そうな顔をしていたけど、いきなり親しくもない人間の家に呼びつけられたらいい気がしなくて当然だと思うし、それはぜんぜん気にならなかった。


だけど、そんな結人くんも、沙奈子のハンバーグを口にした瞬間、ハッとした表情になったように見えた。それからは黙ってガツガツと貪るようにして食べてた。美味しかったんだなって分かった。


それでいいと思う。愛想良くするとか行儀良くするとか、そんなのは結局、表向き大人にとって都合のいい子供の姿っていうだけだと思う。沙奈子だって、行儀はともかく愛想良くなんてできてない。でもこの子はとても優しくて思いやりのある子だ。僕はそれを知ってる。『愛想悪くて可愛げのない子供』と、沙奈子のことをよく知らない人が悪く言ってても、関係ない。そんなの気にしなくていい。


だから、沙奈子だってそんななんだし、結人くんが愛想良かったり行儀良かったりっていうのができないのは当然なんだ。彼はまだ、生きるだけで精一杯ってことだと思うんだ。自分のことだけで手一杯で、他人にまで気が回らないだけなんじゃないかな。


朝食を終わらせて掃除と洗濯をして、沙奈子の午前の勉強を見てる時、僕はそんなことを考えてた。


今日も夕食に招待しようかなと思う。


でもその前に、千早ちはやちゃんたちだ。いつものようにお昼を作りにやってきた。二階にはちょうど今、結人くんがいるはず。だけど今はまだ会わせるのは早いかなと思った。昨日初めて会った時の彼の印象からすると、人に引き合わされるのは彼にとって大きな負担になるだろうなって感じたんだ。たぶん、昔の僕と似てるところがある気がする。


僕は彼みたいにケンカはしなかったけど、他人のことを避けてなるべく顔を会わせたくないと思ってたのは事実だし、大人しいふりをして内心では不穏なことも考えてたりもした。だから表向きは大人にとって扱いやすい子供に見えてたんだろうなとは思いつつ、でも実際の僕はすごく危険な子供だったのも分かるんだ。ほんの些細なきっかけで有り得ないことをしでかしかねない。


そんな僕が結人くんのことを責められるとも思えない。彼に偉そうに説教できるとも思えない。だから待つ。そして、彼の前で大人として恥ずかしくない人間でいなくちゃと思うだけだ。沙奈子に対してしてるのと同じように。


そうだ。彼は沙奈子と同じなんだ。この子にも彼と同じ、とても衝動的で激しい部分が潜んでる。


この子にしてるのと同じ接し方が役に立つかもしれないんだ。





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