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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三十六 織姫編 「偶然の一致」

三月二十六日。月曜日。朝はまだひんやりしてるけど、ようやく春の陽気っぽくなってきたんだろうか。


沙奈子には今日から、山仁やまひとさんのところで朝から過ごしてもらうことになる。宿題はないけど、星谷ひかりたにさんに勉強を見てもらったりすることになるのかな。


実は、昨日あれから、玲那が不思議なことを言い出した。


「その、結人ゆうとくんに怪我させたっていう宿角健侍すくすみけんじくんの話を聞いてさ、思い出したことがあるんだ…。


以前、私、夢の中で香保理かほりに会ったって言ってたでしょ?。別の平行世界の香保理に。


で、その時、そっちの香保理の世界にいた私の名前が宿角玲那すくすみれいなだったんだよね。それだけならまあ偶然の一致かもって思ってたんだけどさ。宿角健侍くんって名前を聞いてはっきり思い出しちゃったんだ。


平行世界の私、宿角玲那が殺したのって、その宿角健侍くんと彼のお父さんの宿角健雅すくすみけんがって人だったんだってさ。


もちろん、私がいくらアニメが好きだからってそういうのが現実にあると思ってる訳じゃないよ?。だけど、偶然の一致にしては気持ち悪いくらいだなあって思ったりもしたんだ」


だって。


正直、その話を聞いた時には『何を言ってるんだろう?』って呆気に取られてしまったけど、玲那がふざけてそんな話をするわけがないのも分かってる。だから「偶然の一致って怖いな」って返しておいたんだ。


でもその時、星谷ひかりたにさんが、


「それは単なる偶然の一致ではないかもしれませんよ?」


って言い出して。


僕も玲那も「え!?」って驚いてしまったけど、星谷さんは、


「玲那さん自身が覚えてらっしゃらなかっただけで、その宿角健雅すくすみけんが容疑者や宿角健侍すくすみけんじくんと、どこかで実際に会っていたか名前を聞いていたかしていたのかもしれません。例えば病院の受付とかで一緒になっていたとか。それが無意識の領域で記憶として残っていて、夢の中で再利用されてしまったという可能性は十分にあると思います」


「…あ……」


そう言われて、僕も玲那も納得してしまった。それ自体がすごい偶然ではあるけれど、星谷さんが言ったことは、可能性としてはゼロではないよね。本当に偶然に玲那の頭に勝手に浮かんだ名前が一致するよりはむしろありそうな話だと思ってしまった。


そんなことをすぐに思い付くとか、星谷さんの発想ってどこまでも僕たちとは違うんだって思わされてしまったな。


オカルト的に一致するよりはまだ安心できる解釈だったことで、何だかホッとしてしまったのだった。



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