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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三十四 織姫編 「心機一転」

三月二十五日。日曜日。いい天気なのはいいけど、僕の気分はさすがに晴れやかとはいかなかった。


昨日あれから、カラオケボックスまで星谷ひかりたにさんが来てくれた。そして鷲崎わしざきさんの話を聞いて、躊躇うことなく、


「分かりました。弁護士を立てて話をするべき案件だと判断します。同時に探偵事務所に背景を探ってもらいましょう。費用は必要ですが極力抑える方向で対処します」


と告げた。それに対して鷲崎さんも、


「よろしくお願いします。貯金ならありますから…!。泣き寝入りはしたくありません…!」


だって。何と言うか、勇ましいな。僕とはだいぶ違う。でも、その辺りの思い切りの良さは、ちょっと絵里奈にも似てるのかな。


それからはあれよあれよという間に、引っ越しと結人ゆうとくんの転校も決まった。こうなるともう、今の学校にしがみつくこともないと思ったらしい。何より、結人くん自身が、『別に、俺はどこでもいい』と言ったそうだ。


転校先はもちろん、沙奈子が通う学校。そして引っ越し先は、僕と沙奈子が住んでるアパートの七号室がちょうど空いてたから、アパートに掛かってた『入居者募集』の看板に書かれてた連絡先を教えるとすぐに問い合わせて、今日、契約に行くそうだった。たまたま看板を掲げてた不動産屋の支店が近くにあってそこで契約できるからってことだ。引っ越し業者は星谷ひかりたにさんが仲介して安く済ましてくれるって。


なんだかすごく大変なことが起こったと思ってたのに、みるみる話が進んでいく。


今日も当然、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんがお昼を作りに来るから星谷さんも一緒に来ることになる。


そして昼前、三人がいつものように現れた。


もう僕たちが何も言わなくても沙奈子と千早ちゃんと大希くんは自分たちで料理を始める。だから僕は星谷さんと話をすることになった。そこにちょうど、不動産屋に契約に行ってた鷲崎さんが戻ってきて、ビデオ通話が繋がる。


「本当に、ありがとうございます。何もかもお世話になってしまって」


星谷さんの姿を見るなり、鷲崎さんが深々と頭を下げてそう言った。


「いえ、私としても、このところ自らの力の無さを実感させられる事例が続いていましたので、お役に立てて本当に嬉しいです」


だって。


確かに、波多野さんのこととか田上たのうえさんのこととか、すっきり解決しないことが続いてたからなあ。もちろん今回のこともそんなにすっきり解決とはいかないかもしれないけど、少なくとも鷲崎さんと結人くんは新しい環境で心機一転ってことにできそうだし、しかも沙奈子が通う学校に通うなら、きっと結人くんにとってもいいことだと思うんだ。



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