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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三十三 織姫編 「相手におもねって」

三月二十四日。土曜日。今日も朝からいい天気だった。沙奈子の学校は今日から春休みだ。


だけど、さすがに今日は家族水入らずでのんびりと、という気分にはなれなかった。でも沙奈子のために家族が顔を合わせるというのも大事だと思う。だからカラオケボックスに集まって、鷲崎さんの話を聞くことにした。


昨日、山仁やまひとさんのところでちゃんと事情を説明して、星谷ひかりたにさんの助力を得ようということになった。鷲崎わしざきさん自身はまだ迷惑になるんじゃないかということを気にしてるようだけど。


『また教頭と担任が訪ねてきました。これから話をします』


というメッセージが届く。


先方の保護者が結人ゆうとくん側が謝罪するべき、謝罪がない場合は裁判も辞さないみたいなことを言いだしてるってことで、本当に厄介なことになったなというのが正直な印象だった。


それにしても相手の方も、実際にハサミで切り付けたのはそっちだし、しかも入院するほどの怪我をしてるのは結人くんの方なんだから裁判なんか起こせばそれこそ藪蛇になりそうなのに、どうしてそんなに強気なんだろう。何を根拠にしてるんだろう。不思議すぎる。


邪魔されずに気軽に個室を使えるってことでカラオケボックスには来たものの、唯一カラオケを歌いまくるということをしていたことのある玲那は今では歌えないし、僕も沙奈子も絵里奈も積極的に歌うこともないから、正直、微妙な空気の中でただ鷲崎さんからのメッセージを待つことになった。


でも三十分ほどして届いた鷲崎さんのメッセージに、僕たちはある意味ではショックを受けてしまった。


『教頭と担任が、結人が悪いということで先方に謝罪するように言ってきました』


『謝罪しないと学校も含めて告訴するといってるそうです』


『だから結人一人を悪者にして謝罪させてうやむやにしようとしてるんだと思います』


『私ももう我慢できませんでした』


『絶対に謝罪しません。させません!』


だって。


ビデオ通話に切り替えた時に映った鷲崎さんの顔も、泣いてたように目を腫らしてるのと同時に完全に怒ってた。


「ごねてる相手におもねって、大怪我した方に謝罪させるって意味分かりません!。


確かにケンカを仕掛けられたからってそれに応じた結人も悪いと思いますけど、これは違いますよね!?。先輩!!」


「そうだね…、僕もそう思う。だからやっぱり、ちゃんと相談しよう」


そうして僕は、星谷ひかりたにさんに電話した。


「…なるほど。事情は分かりました。詳しいお話を伺いたいので、今からそちらに向かいます」



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