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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三十二 織姫編 「迷惑なんかじゃ」

三月二十三日。金曜日。晴れた。久しぶりの太陽だった。気温は低いけど、日が当たるところにいれば温かそうだ。今日は沙奈子の学校の終業式。


六年生の卒業式と同じで、それについては何の問題もない。普通に学校に行ってもらってもらえばいいだけだ。


そう、こっちはぜんぜん普通なんだ。なんてこともない平穏な毎日だった。春休みに入って宿題もない休日をのんびり過ごしてもらえばいいだけなんだ。また平日は山仁やまひとさんのところにお世話になるけど、それももういつものことだし山仁さんに『是非どうぞ』と言ってもらえてる。


なのに、鷲崎わしざきさんの方はまったくそうじゃなかった。教頭と担任が改めて家まで来て、『話を大きくすると鯨井くじらいくんの将来にも差し障りますよ』と、とにかく事件化しないようにって感じで説得しに来たって話だった。


鷲崎さんとしても、本音で言えば大事にしたくないという気持ちはあった。結人ゆうとくんの将来に不利になるようなことは避けたいという気持ちもあった。だけど、凶器を持ち出してまで相手に大怪我を負わせたという<事件>を、誰も責任を負わずになあなあで終わらせてしまっていいのかっていう疑問がどうしても拭えなかったんだ。


だから、


「…考えさせてください……」


って…。


なのに、僕の仕事が終わって山仁さんのところに顔を出して沙奈子を連れてアパートに帰ってからビデオ通話を繋ぐと、また鷲崎さんが泣いていた。


「向こうの保護者が、『ケンカになったのはそっちが仕掛けたせいだ。謝罪しろ』って、学校に言ってきたそうなんです。しかも謝罪しなかったら裁判を起こすって……。


私、もうどうしたらいいのか……」


なんだそれ…、無茶苦茶だよ……。


「鷲崎さん…、さすがにそこまでのことになったら僕たちだけじゃ手に負えないと思う。みんなの力を借りよう…?。大丈夫、迷惑なんかじゃないから…!」


実はここまで、今回の件については山仁さんのところではちゃんと話題にしてなかった。『ちょっと困ったことがあって、今様子を見てるところです』とだけ説明させてもらってた。それに対して星谷ひかりたにさんは、


「…もし私の力が必要であればいつでもおっしゃってください。私は、私の親しい人にそのような表情をさせる者を看過することができません…!」


と真っ直ぐに力を込めた目で見詰めながら言った。僕の表情だけで実は既に大変なことになってると見抜いてたんだろうな。だけど僕が『様子を見てるところです』って言うから敢えてそれを尊重してくれたんだと思う。


でも本当に、すべてを見透かされてるような気がして怖いくらいだった。


だけど星谷さんは僕たちのことを大切に想ってくれてるんだ。だからこそ頼ろうと思うんだ。



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