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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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六百三十一 織姫編 「ちょっとふざけてただけ」

三月二十二日。木曜日。ようやく雨が止んだ感じかな。天気はまだすっきりしないけど。


今日は、六年生の卒業式。沙奈子の学校では、五年生が在校生代表として出席するそうだ。つまり沙奈子や千早ちゃんや大希くんが六年生を送り出すことになる。


九時過ぎに学校に着けばいいそうだから、朝一で山仁やまひとさんのところに沙奈子を送り届けて、後は大希くんと一緒に学校に行ってもらえばいいと思う。


そちらは何の問題もない。いつも通り、平穏に粛々と進めればいいだけだ。


だけど、結人ゆうとくんはまだ入院したままだ。退院までは一週間くらいかかると見られてるらしい。




実は昨日、あれからまた動きがあった。結人ゆうとくんのところにお見舞いに行った時、学校の教頭と担任に鉢合わせしたらしい。でもそれはただお見舞いに来たとかじゃなくて、『口止め』をしに来たってことだった。


「結人に対しても、『ふざけててちょっとケンカになっただけだってことだよね?』って何度もしつこく聞いてきたそうです…。しかも、『そういうことじゃないと鯨井くじらいくんにも責任があるってことになってしまうからね?。そうなると君の保護者の人にも迷惑が掛かってしまうよ』とまで…。


それで結人も思ったって言ってました。『これはちょっとふざけてただけって言えってことだな』って……。


私が来たら来たで、私にも『彼の将来のことを思えば些細な子供同士のケンカということにしておいた方がいいですよ』って言ってきました……。


先輩?。そういうもんなんですか?。今回のがただの『子供のケンカ』とは思えない私がおかしいんですか?。ハサミを持ち出して相手に切りつけるようなのが、体重が十キロ以上違う相手に頭から突っ込んで吹っ飛ばして肋骨にひびを入れるようなのが『子供のケンカ』で済まされることなんですか?。それが世の中の常識なんですか?。


そんなのが常識の世の中なんて、私、怖くて仕方ありません。それじゃ『やったもん勝ち』じゃないですか…!?。相手に大怪我させても『子供のケンカ』で無罪放免って、『少年法は大甘』だとかのレベルじゃないって私が思うのが変なんですか?。これって犯罪を隠蔽しようとしてるんじゃないのかって思う私の方が間違ってるんですか……!?。


もし、結人にも責任があるっていうんだったら、私はそれでも仕方ないと思ってます。あの子も罪に問われるんなら、間違ったことをしたっていうんなら、ちゃんとそれは咎められるべきだと思います。


でも、ただの『子供のケンカ』ってことにしようとするのがいいとはどうしても思えないんです……!」



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